ベビーセンサー(体動センサー)でSIDS事故を防ぐ|午睡チェックの負担も軽減
長い一日を過ごす保育園児にとってなくてはならない習慣のひとつが「お昼寝」です。お昼寝は「午睡」とも言い、お昼に眠るという意味合いがあります。月齢や年齢によってお昼寝のタイミングや時間の長さ、必要性も変わってくるものです。なぜお昼寝をするのか、その際の注意点など、年齢別の違いも見ていきましょう。
子ども達一人ひとりの生活リズムは家庭によって違いますが、保育園での子どもの成長やスムーズな生活のためにお昼寝を取り入れている園がほとんどでしょう。どのような目的があるのでしょうか。
お昼寝は、子どもの体と頭を休ませることが最大の目的です。休ませることによって、成長を促し、お昼寝の後の活動を元気に過ごすことができるのです。
お昼寝保育については、各保育園の考え方や方法は様々です。例えば、午前寝を取り入れてる保育園、年長児になるにつれてお昼寝の時間を減らし、就学へ向けてはお昼寝をしない園、お昼寝を希望する子どもにだけさせている場合もあります。
お昼寝をさせる目的やねらいはメリットがあってこそなのですが、最近はデメリットについても考えられ、様々な意見もあります。メリットとデメリットを見てみましょう。
メリットは、保育指針や保育士の保育計画にもあるように、心と体の休息を通して生活のリズムを整えること、休息をすることで午後からの活動も元気に過ごせることなどがあげられます。低年齢の子どもほど、眠くなることで集中力に欠けてしまい、ケガや事故につながることが考えられます。また、子ども同士のトラブルや喧嘩も眠いことによる機嫌の悪さから誘発され、増えてしまいます。お昼寝を取り入れることで、しっかりと体と心をやすませれば、集中し機嫌よく過ごすことができるという最大のメリットがあるのです。
近年、お昼寝をさせることによるデメリットも多く寄せられています。家庭での生活リズムは一人ひとり違いがあります。起床時間が遅めの子ども、帰宅後の就寝時間が遅い子どもなど様々でしょう。本来生活のリズムを整え、体を休ませる目的のあるお昼寝も、そういった生活様式の多様化した現代ではデメリットが生じている場合もあります。例えば、お昼寝をすることによって夜眠らない、朝起きるのが遅いためお昼寝の時間も眠くならず子どもにとって苦痛である、お昼寝の習慣が抜けきらず、就学目前になっても昼食後は眠たがるなどがあげられています。
保育園は年齢や子ども本人の体調に合わせて少しずつ対応を検討するなどの動きも見られ始めています。
保育現場では、メリット・デメリットを踏まえ、年齢や月齢によりお昼寝の対応を変える柔軟な対応が必要になっています。
0歳児は、産休明けの生後2か月から入園が可能な園もあります。生後2か月から0歳11か月までの生活リズムは違ってきますが、低月齢の子どもであればお昼寝というよりはほぼ一日眠って過ごすことになるでしょう。3か月~5か月で生活リズムが整いはじめ、午前寝と午後寝の2回ほどお昼寝をします。6か月~11か月くらいになると日中の活動が増えてくるので、午前寝はしなくなります。午睡だけで体力が続くようになる子どももいますが、個人差はあります。
1歳児・2歳児は午睡だけで過ごすことができるようになります。午睡の時間は平均して2時間程度ですが、体力差や家庭での生活リズムの違いによって変わってきます。
3歳児くらいになると体力がついてきますので、午睡が不要になる子供が増えてきます。4歳児から5歳児はさらに増えてくることでしょう。午睡を特に強制せず、その時間は活動を控えめにし、絵本を読んだり絵を描く、ゴロゴロとするなど、休息する時間にしている園も増えています。午睡は3歳までで良い、または、5歳でもすべき、など様々な意見がありますが大切なことは子ども一人ひとりの体調や体力、機嫌などに合わせて柔軟な対応をすることです。体力がついてきても、集団生活を1日過ごすのは子どもの体には負担がかかります。家庭と上手に連携をとりながら個々に対応していくことが必要です。
午睡中であっても保育士は目を離すことがあってはなりません。必ず数名が子どものそばに寄添い、様子を常に観察しています。どのような注意が必要なのでしょうか。
保育士は子どもの眠っている時間であってもそばを離れることなく常に観察をしています。呼吸の状態や熱、咳、また、口の中に何かが入ったまま眠っていることはないか、顔の周りにぬいぐるみや柔らかな布など呼吸の妨げになるようなものがないか、チェックしていきます。また、室内の気温や湿度、明るさや騒音なども常にチェックし、眠りやすい環境を調えます。
ふいに目が覚めた子どもから保育士の姿が見えて安心ができるようにも心がけています。保育士にとっては子どもが眠る時間は事務仕事や打ち合わせなどに充てたい時間でもあり、午睡時チェックは負担となりますが、事故を未然に防ぎ子どもの命を守るために行われています。
保育園で午睡の時に起こる事故としてSIDS(乳幼児突然死症候群)があげられます。睡眠中に赤ちゃんが死亡する原因には、乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)という病気のほか、窒息などによる事故があり、 平成30年には60名(概数)の乳幼児がSIDSで亡くなっており、乳児期の死亡原因としては第4位となっています。 SIDSの予防方法は確立していませんが3つのポイントを守ることで、死亡率が低下するというデータがあります。
寝かせる時にうつぶせに寝かせたときの方がSIDSの発生率が高いということが研究者の調査からわかっています。
母乳で育てられている赤ちゃんの方がSIDSの発生率が低いということが研究者の調査からわかっています。
たばこはSIDS発生の大きな危険因子です。妊娠中の喫煙はおなかの赤ちゃんの体重が増えにくくなりますし、呼吸中枢にも明らかによくない影響を及ぼします。
ここで保育園としてできることは、あおむけに寝かせることです。うつぶせ寝の方が眠りが深く、寝かしつけやすい、眠りに入りやすいという子どももいますが、事故につながる危険性が高いことも知られています。うつぶせ寝のくせがついている子どももいますが、常に仰向けで眠っているかチェックし、保育士は事故を未然に防いでいきましょう。また、保護者にもうつぶせ寝の危険性について繰り返し話し、自宅でも事故や突然死につながることのないように伝えていく必要があります。
SIDS(乳幼児突然死症候群)による事故のリスクが高い0歳児の場合、5分おきのチェックが必要です。1歳〜2歳の場合は、10分おきが望ましいです。入園したての時期の発症率が高いというデータもあるので、入園後1ヶ月は、特に注意してチェックしなければなりません。体調不良時や休み明けなど、普段と違う状態の時は保護者から丁寧に状態を聞き、保育士のそばに寝かせておくなどの対応も必要です。膨大な業務をかかえる保育士にとって、その負担は計り知れません。万が一の事態が起こる前に、保育士の負担を少しでも補佐できるような午睡中の呼吸体動をチェックできるベビーセンサーや、その他の書類業務を大幅に軽減できるICTシステムの導入を検討することも必要になってくるでしょう。ベビーセンサーやICTシステムの利用は、園として、保育士にとって、一つの安心材料となるでしょう。
午睡は年齢や月齢だけではなく、個々の生活リズムや体力によって必要性が変わるので柔軟に対応していきたいものです。家庭と上手に連携をとり、生活リズムを整えることが子どもの成長や日々の快適な生活に大切なことだということを繰り返し伝えていきましょう。保育園は家庭保育の一端を担う場所として適切な午睡の援助をしていく必要があります。午睡に関する注意点を園内で常に確認をしあい、子ども達の健やかな成長を促しましょう。