保育園でできる防災対策|災害時に備えて保育所でできること
地域の不審者情報メールが届くたびに「子どもたちが狙われていないといいけれど」と思うことはありませんか。大人に比べ、体が小さく、判断力や対応力も未熟である子どもたち。狙う側も、対象にしやすい存在だと考えられます。そして、保育園は子どもたちが毎日通ってくる場所です。保育園として不審者対策をすることはもちろん、子どもが自ら身を守るために働きかけることもできます。
今回は、普段からできる防犯対策について、園としての不審者対応と、子どもたちへの働きかけに焦点を当て、ご紹介していきます。
保育施設で起きている、近年の不審者情報を見てみましょう。
2006年11月に、鹿児島県の保育園にカッターナイフを持った男が侵入した事件がありました。鹿児島中央署員が駆けつけ、犯人は建造物侵入と暴力行為法違反で現行犯逮捕されています。園には0歳から6歳の園児15人と女性保育士2人がいましたが、怪我はありませんでした。パート従業員女性(45)の胸元にカッターナイフを突きつけ、「いつもうるさくて眠れない」などと脅迫したとされています。
また、2017年に大分県にある認定こども園に刃物を持った男が侵入し、保育士や園児3名が負傷するという事件もありました。
保育園での不審者による事件は、数としてさほど多くはありません。しかし「この人、ちょっと警戒しよう」や「警察に電話を入れておこう」という経験をされている方は少なくないでしょう。「もし自分が不審者に出くわしたら」ということを想像した上で、日頃から対策をとっておくことが大切です。
私たちが生活の中で「不審者」だと感じる要素は3つがあります。
見た目は、目立たないように黒い服を着ていることや、フードをかぶっている、サングラスをかけているなど、何かしらを「隠している」見た目の場合、不審者を疑いましょう。
新型コロナウイルスの感染拡大防止の影響で、マスクが常用となったこともあり、不審者の見分けがつきにくくなったという声もあります。
行動は、同じところをうろうろする、特定の誰かに視線を送っている、独り言をぶつぶつと言っているなど挙動不審な態度をとっている場合、注意が必要です。
「なんとなく不思議な感じ」「こちらに何か仕掛けようとしている感じがする」など、違和感を感じることもあります。不審者は「知らない人」であることが大半ですが、知っている人でも「違和感」を感じた場合は、警戒心を持つことも必要です。
保育園は子どもたちの生活の場であり、お散歩や送迎など、日常的に園の敷地外を子どもたちが行き来しています。特に朝夕の送迎のピークの時間帯となると、多くの人が行き来します。対象別に合わせた防犯対策をみていきましょう。
保育園でできる不審者対策としては、4つあります。
事前の情報収集とは、例を見ていきましょう。
これらを知っておくことで、いざというときの備えになるだけでなく「もっとここを強化したほうがいい」という検討にもつながります。集めた情報をもとに、職員・子ども・保護者・地域への啓発にもつなげましょう。園が防犯対策に熱心であることは、安心感を与えるだけでなく「ここの園に侵入したしたらすぐにつかまる」というメッセージにもなります。
設備やマニュアルを整えることについては、保育所保育指針解説(厚生労働省)にも記載されています。園長・主任を中心にマニュアルの内容を確認し、必要であれば見直すことを定期的に行いましょう。
目に見える設備ではありませんが、一つの環境として「保護者や地域住民等、関係機関」も視野に入れておくといいでしょう。普段からの関わりを持っていれば、情報が得られたりいざという時の助けになってもらえることでしょう。
出典:「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」/内閣府・文部科学省・厚生労働省
続いて、起きた場合の対応としては、子どもを守る人、通報する人、不審者に対応する人、判断する人と言った役割分担が必要です。園長が不在だった場合、子どもが少なかった場合、お散歩中など、様々な状況を想定して訓練をしておくことが、いざというときの助けになります。
次に、子どもたちとできる防犯対策です。特に、3歳以上児になると保育士の配置基準も大きく変わるため、子ども自身が「自分で逃げる」ことや「声をだす」と言った行動を取ることが必要になります。
災害に対する避難訓練と同じく、防災計画の中で実施されていることでしょう。
不審者訓練の方法は様々で、園の職員が企画して実施することもあれば、警察署や防犯関係のNPOなどの協力の元、行っていることもあります。
防犯訓練については「怖い思い」が、子どもの印象に強く残ることがあります。
大人が方法を確認すること、子どもが意識することはもちろん、紙芝居や映像を使うなどして「教育的な意図」が伝わる計画で実施しましょう。
子どもへの不審者対策の基本としては、「いかのおすし」が活用されています。標語を使うことで、子どもたちの記憶に残ります。
不審者は人目を忍んで犯行におよびます。まずはついていかないことを徹底する必要があります。こどもが犯罪に巻き込まれないこと、自分の身を守ることを身に付けるためにも、必ず抑えておきましょう。
保育園で働く職員は、女性が多く、普段から子どもたちに優しく丁寧な関わりをしています。そのため、不審者対応などの緊急事態について日常から慣れていることはほとんどありません。早番や遅番、お散歩時など、少人数で保育を行っている場面もあります。安心して保育を行うためにも「不審者対応」は意識して、スキルとして身に付ける必要があります。
まずは、防犯マニュアルを徹底することです。
特に、「いざというとき」に行動できるのは訓練しているかどうかです。意識や知識に働きかけることはもちろん、訓練を通して体や行動で覚えることも積極的に取り入れましょう。不審者対策には、職員間の連携が上手く取れることも重要ですので、半年に一回を目安として、行うようにしましょう。
不審者対策としては、毎日顔を合わす保護者がどのような意識で園に関わっているかもポイントになります。普段から、送迎時のやりとりや掲示を活用して、保護者への情報提供を行うことで、保護者の意識が高まります。
保護者に情報提供を行っていることで、「近くで不審者が出たという情報がありました」「あそこの扉は、誰か立っておいたほうがいいかもしれない」「子どもと、いかのおすしをかくにんしています」など、保護者から情報が届くことにもつながります。
また送迎の際、しっかりと扉を閉めることやいざというときのお迎えの協力依頼を行っておくことも、普段からできる不審者対策の一つと言えます。
不審者対策は、まずは「侵入させないこと」が大切です。
普段から挨拶をよくしていたり、外から見えるところに防犯カメラがあったり、子どもに目が行き届いていたりすることも、普段からできる不審者対策と言えます。入ってしまってからの対応に加え「どうしたら侵入を防げるか」という視点を持って、対策を立てましょう。