保育士向け指導案の書き方(テンプレート付き)ねらい・遊び・製作・内容を考える

保育士向け指導案の書き方(テンプレート付き)ねらい・遊び・製作・内容を考える

運営・経営

2020年5月18日

保育の業務の中でも、煩わしさを感じることの多い「指導計画」や「指導案」の作成。その理由としては、一人ひとり違う子どもの姿を言葉にすることの難しさ、養成校で学んできたことと保育現場での実態に違いがあること、保育の展開をイメージできないことなどが挙げられます。今回は、保育士向け指導案の作成の方法や具体的な書き方、参考例等などについて考えていきましょう。

保育の指導案とは?

そもそも保育のなかで、保育指導案はどのような意味があるのかを考えてみましょう。
保育所保育指針解説書の3保育の計画及び評価には、

子ども自らが興味や関心をもって環境に関わりながら多様な経験を重ねていけるようにするためには、保育士等が乳幼児期の発達の特性と一人一人の子どもの実態を踏まえ、保育の環境を計画的に構成することが重要となる

 
と記されています。つまり、指導計画や指導案は子どもが保育園生活の中で充実した時間を過ごし、健やかに育つために作成すると言い換える事ができます。ねらいや活動の内容、保育士の援助や環境構成などをイメージし、細かく記載する事で見通しを持った保育を行う事ができます。
また、保育指導案は、保育がその場しのぎになってしまうことを避け、子どもの発達に即した保育を実践するために不可欠なものです。保育に対してあらかじめ計画を立ることは、保育士間で価値観の違いが生まれたり、日々の保育に迷いが生まれた際のよりどころにもなります。保育指導案は、日々の保育の中で現時点での育ちや興味を把握し、1年を通してどのよう目標をもって保育を行うのかを記した年間計画に始まり、年間の目標に向けて月、週、日単位で、具体的にどのような活動や働きかけを行うのかを記載いた月案、集安、日案の4種類があります。
また、作成する際の注意点としては、以下の4点が挙げられます。

  • 子どもの年齢によって書き方が変わるため、保育所保育指針の保育のねらいや内容を確認する
  • 指導案の様式や書き方は保育園によって違うため、園長や主任保育士、先輩の保育士に指導を受けながら作成する
  • 一度作成した計画でも、担当している子どもの姿に合わせ柔軟に発展させていく必要がある
  • 年度の途中で大幅に保育の方向性を変えることは、子どもたちにとっては戸惑いの原因になるため、園の保育方針に基づいた上で、年間計画から日案まで、一貫性をもって作成することが重要
  •  
    指導案を作成する際は、厚生労働省が定める「保育所保育指針」「保育所保育指針解説」に示されている年齢別の保育のねらいや内容を元に作成します。保育指導案の作成を担当する際は一度目を通しておくと良いでしょう。

    保育の指導案のねらいと内容

    保育指導案は、厚生労働省の保育所保育指針で、年齢ごとに示された「保育のねらいや内容」を踏まえて作成します。ねらいと内容は「乳児保育」「1歳以上3歳未満児の保育」「3歳以上児の保育」に分けて記載され、保育の目標を目指す目的で分類された5領域で構成されています。それぞれについて確認しましょう。

    指導案のねらい

    保育所保育指針に示されている「ねらい」は、保育によって実現したい、その年齢の子どもたちの姿を言語化したものです。
    例えば「1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容」の「表現」という項目では「感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする」と記され、以下の3つが掲げられています。

  • 身体の諸感覚の経験を豊かにし、様々な感覚を味わう。
  • 感じたことや考えたことなどを自分なりに表現しようとする。
  • 生活や遊びの様々な体験を通して、イメージや感性が豊かになる。
  • 【引用】保育所保育指針

    これらをもとに、指導案の中で具体的な「ねらい」を立てていきます。
    例えば「身体の諸感覚の経験を豊かにし、様々な感覚を味わう」をもとにした日案のねらいは「指先や手のひらを使って、小麦粉粘土の感触を味わう」や「歌や写真をもとにイメージを膨らまし、体を使って表現することを楽しむ」などです。「表現活動」と聞くと音楽、身体、造形などが浮かんできますが、保育の中では技術よりも「子どもが心で感じていることを、作品や行動に表わしているかどうか」を重視しましょう。

    指導案の内容

    保育指針における内容は、ねらいを達成するために保育士がとるべき行動や、保育士の援助を得ながら子どもに経験させたい項目がまとめられたものです。「1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容」の「表現」という項目では、ねらいに基づき以下の6つの内容が示されています。

  • 水、砂、土、紙、粘土など様々な素材に触れて楽しむ。
  • 音楽、リズムやそれに合わせた体の動きを楽しむ。
  • 生活の中で様々な音、形、色、手触り、動き、味、香りなどに気付いたり、感じたりして楽しむ。
  • 歌を歌ったり、簡単な手遊びや全身を使う遊びを楽しんだりする。
  • 保育士等からの話や、生活や遊びの中での出来事を通して、イメージを豊かにする。
  • 生活や遊びの中で、興味のあることや経験したことなどを自分なりに表現する。
  • また、内容の取扱いについても以下のように細かい記載があります。

  • 子どもの表現は、遊びや生活の様々な場面で表出されているものであることから、それらを積極的に受け止め、様々な表現の仕方や感性を豊かにする経験となるようにすること。
  • 子どもが試行錯誤しながら様々な表現を楽しむことや、自分の力でやり遂げる充実感などに気付くよう、温かく見守るとともに、適切に援助を行うようにすること。
  • 様々な感情の表現等を通じて、子どもが自分の感情や気持ちに気付くようになる時期であることに鑑み、受容的な関わりの中で自信をもって表現をすることや、諦めずに続けた後の達成感等を感じられるような経験が蓄積されるようにすること。
  • 身近な自然や身の回りの事物に関わる中で、発見や心が動く経験が得られるよう、諸感覚を働かせることを楽しむ遊びや素材を用意するなど保育の環境を整えること。
  • 【引用】保育所保育指針

    これらを参考に、指導案の中で具体的な「内容」を記載します。
    例えば「水、砂、土、紙、粘土など様々な素材に触れて楽しむ」をもとにした日案の内容は「保育士が作った小麦粉粘土で、自分の興味があるものを製作する」となります。また、内容の取扱いについては④身近な自然や身の回りの事物に関わる中で、発見や心が動く経験が得られるよう、諸感覚を働かせることを楽しむ遊びや素材を用意するなど保育の環境を整えることを参考にすると良いでしょう。

    指導案の書き方(テンプレート付き)

    保育指導案の中でも、年間案や月間案などの長期案は、保育方針をもとにした大枠の指導案です。1月後・1年後の子どもたちの成長した姿をイメージし計画を立てます。また短期案ではできるだけねらいを絞って、より具体的な案を立てます。まずは長期案を立て、その目標に向けて詳細に週案・日案を作成していきます。ここでは、日案の記載をもとに見ていきましょう。

    指導案を書く手順

    指導案を作成する場合は、1年間を通して目標とする計画を立てた後、それに沿って月、週、日々に下していく形で組みたてると分かりやすいです。作成する手順としては、まず年間の指導案からはじめ、月案、週案、日案と続けて書くことが一般的です。
    記載する上で効率的な準備は、以下の通りです。

    1. 対象となる子どもの興味や発達段階、保育士との関係性などについてじっくりと観察する
    2. 働いている保育園の保育方針をしっかり把握すること
    3. 前年度、前々年度の指導案や日誌に目を通す

    現在の子どもの姿を把握することから始め、事前の情報収集を行いましょう。また、複数担任のクラスで指導案の作成を任された場合は自分の主観だけではなく、クラスの保育士の意見も聞きながら、計画や指導案の内容を決めるようにしましょう。続いて指導案の種類とテンプレート、記入例について見ていきます。

    月案を書く際のポイント

    月案を書く際は、その月に予定しているイベントや、季節の行事、経験するであろう事柄をイメージしましょう。例えば、保育園では、春になると新しい友達と出会い、夏には暑い日々の中でプール遊びやお祭り、秋は食物の収穫や運動会を経験することになります。そして、冬になると進級・入学への意欲や、自分自身の成長を実感することになります。また、担任として感じた、子どもたちの心身の成長や葛藤などを盛り込んでもよいでしょう。
    月案
     
    月案のテンプレート→ダウンロートはこちら

    週案を書く際のポイント

    週案は、その週に行う保育の計画に基づいた指導案です。したがって、月案よりも具体的な内容を記載する必要があります。先週の保育や子どもの姿をもとに、次の1週間にどのような保育を予定しているのか、天気予報や子どもの姿の予想なども踏まえ、身近な情報を盛り込みながら、1週間の計画を立てると良いです。特に、子どもたちの興味のある遊びは、週単位で変わることも多いため、丁寧に観察しているかどうかが週案の精度につながります。
    週案
     
    週案のテンプレート→ダウンロートはこちら

    日案を書く際のポイント

    日案は、週案の内容を達成するために、その日にするべきことを詳しく計画し、時系列で記入していきます。登園から降園までの子どもの1日の生活を想定しながら、週案で設定した1週間の内容をより細かく、毎日の達成度も考えながら書きましょう。ほかの指導計画書とは違って、時系列で活動をくわしく記入することが特徴です。前日の子どもの姿をふまえて、さらに翌日に何をすべきかを考えて予定を立てます。

    日案の記入例(活動部分)
     
    日案のテンプレート→ダウンロートはこちら

    製作は、子ども一人ひとりの興味やスキルが分かりやすい遊びの一つです。「表現」という視点で捉えた場合、子どもの心が色濃く投影されていることもあります。子どもの発達を、ハサミやノリの使い方や、指先の器用さ、色の好みなどだけで判断せず、一人ひとりの興味や関心、心もちをしっかりとイメージした指導案作りを目指しましょう。

    ≪ 関連記事 ≫
    保育指導案の書き方・年間計画、月案、週案、日案の指導案作成

    指導案の作り方のポイント

    保育指導案を書く際の共通のポイントについて確認しましょう。年・月・週・日どの案でも共通して言えることは、日々の保育を丁寧に観察すること・共通認識を図ること・言葉や方向性を統一することです。一つ一つ見ていきましょう。
    指導案の作り方のポイント"

    日々の保育を丁寧に観察する

    年間指導計画(指導案)の場合は、現在の様子から子どもの1年後の姿を予測し、日々の保育の中で育ってもらいたい部分をねらいとします。また週案や月案では、子どもが現在取り組んでいることや興味のあることから、一歩発展させて実現可能なねらいを立てることが必要です。そのためには、年齢にあった発達段階を押さえることはもちろん、一人ひとりの子どもの興味や実際に遊んでいる様子を丁寧に観察しましょう。特に、年間指導計画は年度が始まる前に作成するため、自分自身での観察に加え、その時点での担任や主任保育士などから情報を得るようにしましょう。また、4月の時点で立てたねらいが合っていないと感じたときには、年度途中であっても柔軟に変更しましょう。

    共通認識を図ること

    保育指導案を作成する際は、必ず園内やクラス内での共通認識を図るようにしましょう。保育は、組織で行われています。このことは、保育と子育ての大きな違いでもあります。園としての方向性や、クラス内での共通認識が持てていない場合、子どもたちにとっては戸惑いの原因になります。午睡中の時間や、朝・夕の引き継ぎの時間などを有効に使って、日々の保育の中で細かい話し合いを持つようにしましょう。

    言葉や方向性を統一する

    指針が改定されたことにより、子ども主体の保育への認識がより高まっています。保育指導案についても、子どもに「~させた」「~してあげた」といった、保育士主導で誘導的な表現は使わないように気を付けましょう。また、語尾の文末表現は、「 だ」「である」などの言い切る表現、もしくは「です」「ます」調 で統一しましょう。園によって表現が決まっていることが多いので新人保育士は、主任保育士や先輩保育士に事前に確認すると良いでしょう。また、文章の主語がぶれないようにすることも基本的な文書作成ルールです。ベテラン保育士で、何年も書いている場合でも誤字脱字がないか、そして言葉の意味を確認することで、自ら保育指導案のスキルを上げていくようにしましょう。

    まとめ

    保育指導案の作成をしっかり行うことで、保育士が見通しを持った保育を行うことができ、子どもにとっては充実した保育生活を送ることにつながることがお分かりいただけましたか。
    子どもたちは遊びを通して、学びを深め発達していきます。
    保育士は専門職です。保育指導案を作成するだけでなく、計画をもとに振り返りを行うことでよりよい保育のための気づきや改善策を見出すことができます。指導案の作成には時間と労力が必要ですが、それだけの意義は十分にあります。今回は参考例をお届けしましたが、あくまでも保育指導案は自分の言葉で作ることが重要です。フォーマットや事例を参考にしながら、目の前の子どもの姿をよく観察し、園内で相談し合いながら、自分の考えを入れて書くよう工夫してください。