保育教諭と保育士との違い|資格取得の特例制度から

保育教諭と保育士との違い|資格取得の特例制度から

運営・経営

2020年8月5日

「保育教諭」という資格をご存知でしょうか。保育士・幼稚園教諭との違い、免許の取り方、取得後勤務できる場所、メリットデメリットなど、今、ニーズが高まっている保育教諭にについてご紹介しましょう。

保育教諭とは?

現代社会は核家族化となり両親共働き世帯が多い中、保育園のニーズが高まっています。この国の子どもの4割以上が保育園を卒園し小学校へ入学しています。保育園児であっても幼稚園と同じように質の高い教育を受けることが求められ、また共働き等に関わらず保育園のような養育機能が求められています。そこで、2006年に「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」 が制定され、幼保一体化施設として認定こども園制度が開始されました。
幼稚園と保育園の両方の機能を持つ「認定こども園」で勤務するためには、保育士と幼稚園教諭の両方の資格を持つ「保育教諭」である必要があります。どのような場合に必要になるのでしょうか。

こども園には4つの種類がある

幼保一体化により広がってきた「認定こども園」にはもともとある施設からの移行が多いため、4つのタイプに分けられています。

幼稚園型 : 元は幼稚園であり、保育園の機能をプラスして運営
・3歳未満児を受持つ際は保育士資格が必要
保育所型:元は保育園であり、幼稚園の機能をプラスして運営
・3歳以上児を受持つ場合は幼稚園教諭免許が必要
幼保連携型:これまでとは違い新しく位置づけされており、文科省・厚生省認可
保育教諭が必要
地方裁量型:元は認可保育園であり、保育園・幼稚園の両方の機能を満たしているため、都道府県によって認可され運営
・3歳以上は幼稚園教諭と保育士資格の両免許・資格の併有が望ましい。
・3歳未満児を受持つ場合は保育士資格が必要

運営内容や受持つ年齢によって必要な資格や免許も変わります。保育教諭が必要なのは、幼保連携型の園に勤務する場合です。

出典:内閣府/認定こども園概要

保育教諭になるには

保育教諭になるためには、保育士と幼稚園教諭の二つの資格・免許が必要で、取得のためには保育士や幼稚園教諭を養成する大学や専門学校で学ぶ必要があります。

「幼稚園教諭免許状・保育士資格の併有促進のための支援策・幼保特例制度」とは?

内閣府によると2024年までは片方の資格だけでも保育教諭として働くことができます。これを幼保特例制度と言います。また、特例制度が適用されるため資格も取得しやすくなっています。

保育士資格だけ持っている人が保育教諭資格を取りたい場合

保育士資格だけ持っている人が保育教諭資格を取りたい場合、幼稚園教諭の免許を取得する必要があります。
保育士等の勤務経験を評価し、幼稚園教諭免許状の授与を受けるために修得することが必要な単位数を軽減するという特例があります。

免許状 基礎資格 保育士等としての実務経験 大学において修得することが必要な最低単位数
幼稚園教諭一種免許状 学士の学位を有すること及び保育士となる資格を有すること

3年

※勤務時間の合計が4,320時間以上の場合に限る。

8単位
幼稚園教諭二種免許状 保育士となる資格を有すること

出典:幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例

幼稚園教諭免許だけ持っている人が保育教諭資格を取りたい場合

幼稚園教諭免許だけ持っている人が保育教諭資格を取りたい場合、保育士資格を取得する必要があります。
特例制度は、幼稚園教諭免許状を有し、幼稚園等において「3年以上かつ4,320時間以上」実務経験を有する方が対象となります。特例制度の対象者は、保育士養成施設において最大8単位(2単位4科目。学校にもよりますが、要する日数としては通学制の場合、20日間程度と見込まれます。)の特例教科目を修得した後に保育士試験によって資格を取得します。
保育士養成施設において特例教科目8単位を修得した場合、保育士試験は全科目免除になります。一方、例えば、保育士養成施設において特例教科目4単位を修得した場合には、保育士試験科目は全科目免除にはなりませんが、修得した特例教科目4単位に応じて一部の保育士試験科目が免除されます。
出典:幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例/厚生労働省

通学はもちろん、今はたくさんの通信教育があるため仕事を休むことなく自分のペースで取得することが可能です。

保育士・幼稚園教諭と「保育教諭」の違い

働く施設にもよりますが、勤務時間が異なります。保育士や幼稚園の機能を併せ持つ施設であれば、お昼寝する子ども、お昼でお迎えや帰宅をする子ども、夕方で帰る子ども、延長保育で夜までいる子どもなど様々。また、保育士だけ、幼稚園教諭だけの視点では気づけない子どもの様子、必要な援助、補いたいことなどが見えてくる視野の広さが身につくことでしょう。

保育教諭の業務内容や勤務場所は?

認定こども園に入園している子どもは、年齢や保護者の勤務状況などによって国からの措置が変わります。

1号認定…保育を必要としない3〜5歳児
2号認定…保育を必要とする3〜5歳児
3号認定…保育を必要とする0〜2歳児

1号認定の子どもは、幼稚園の時間帯で過ごすことになります。園によって違いはありますが、1号と、2号・3号は分けて保育している場合もあるので、配置場所やクラスによって勤務の状況や業務内容は変わってきます。特に3号は未満児や乳児なので保育園の色が濃い業務内容となるでしょう。
また、勤務場所は保育園や幼稚園はもちろん、認定こども園など子どもを保育・教育する現場で活躍することができます。

保育教諭はメリットが多い

保育教諭は、保育士と幼稚園教諭の両方の資格と免許を併せ持つため、広い視野で子どもを見ることができます。例えば保育士資格を活かし、未満児や乳児、また、様々な家庭環境の子どもを保育し、保護者をバックアップできます。幼稚園教諭の免許を活かし、就学に向けて見通しを持ち教育色ある保育もできることでしょう。
就学を目指した教育と、働く家庭の子どもを保育するという両方の面を併せ持つ認定こども園はニーズが高いため、保育園や幼稚園を退職し再就職する際も有利な資格となります。幅広い保育や教育をできる技術が培われるため、自分自身の経験が積めることでしょう。

保育教諭の給料

給与については、

勤続11年の常勤私立保育士の平均が301,823円(賞与込)
勤続7年の幼稚園教諭の平均が287,492円(賞与込)
勤続14年目の常勤私立認定こども園の保育教諭の平均が336,739円(賞与込)

 
となっており、さほどの差はありません。
但し、保育士と同等の処遇改善や家賃補助を得られることもありますので、自治体に問合せてみましょう。
また、平成29年からスタートしている「キャリアパス制度」を利用し、保育士と同じようにキャリアアップ研修を受けるなどして、処遇改善を目指すこともできます。
給与をアップするための補助金の使い道は、保育園に任されているので給料が必ず上がるとは限りませんが、ボーナスや一時金として支給があるかもしれませんね。
 
出典:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】/内閣府

まとめ

保育教諭についてご紹介しました。保育教諭免許が必要でない園で勤務していたとしても、自分自身のキャリアアップのため、また視野を広げ保育や教育の幅を広げるために取得しても良いかもしれません。現代の子どもは多様化し、一人ひとりに必要な関りや支援も多様化しています。保育教諭になることで、様々な面を受け入れながら子どもにとって必要な力を付けたり保護者と連携し育てていくことができるようになるでしょう。