保育所経営って儲かるの?収入面やリスクを管理して安定運営を目指そう!
現在、全国で3,000か所を超える企業主導型保育事業は、仕事・子育て両立支援として、平成28年度に創設されました。 離職の防止、就労の継続、女性の活動等を推進し、企業を支援し従業員が働きながら子育てしやすい環境を整えるための事業です。 内閣府による、企業主導型保育事業の目的は3つです。
企業等が従業員のための保育施設を設置する場合に、整備費・運営費を助成する制度であるため、企業として、子ども・子育て拠出金を負担していることが条件となります。 認可保育園と比較すると、多様な就労形態に対応した保育サービスの提供が可能です。また、従業員の児童に加えて、地域枠の設定が利用定員の50%以内で行えることも、特徴の一つです。 複数企業による共同設置・共同利用が可能です。 企業の特色・メリットを活かした事業展開を図ることができます。
平成31年3月31日現在の企業主導型保育事業助成決定は、3,817施設、定員86,354人分となっています。「助成決定一覧」の施設のうち、「運営開始月」が令和元年7月以前となっている施設は、3,376施設、定員73,680人分です。
現時点で、令和2年度の新規事業については募集されていません。
公益財団法人 児童育成協会より
開園にあたっては、運営費・施設整備費について、認可施設並みの助成が受けられることも、企業主導型保育事業のメリットの一つです。子ども一人あたりの運営費としては、
となっています。 また、運営の他に以下の加算が設定されています。
11時間(13時間)の開所時間の前後の時間に加え、30分以上の延長保育を実施した場合に実施時間に応じてつく加算。
夜間の保育ニーズが日中の保育ニーズよりも高く、大半の児童が開所時間(22時)まで利用している保育施設に対する加算。仮眠のための設備及びその他夜間保育に必要な設備、備品を備えていることが条件。
非正規労働者の子どもを、優先的に入所させるための定員を別に設けている場合の加算。周知していることが条件であり、当該非正規労働者の定員枠が空いている月が対象。
病気にかかっている乳児、幼児又は児童に対し保育を行った場合の加算。
乳児又は幼児に対し、一時的に預かり保育を行った場合の加算。
保育事業を実施する建物が賃貸物件であり、賃借料が発生している場合の加算。
保育士の業務負担を軽減すること、保育士の離職防止を図ること、保育人材の確保を行うことを目的に、子育て支援員研修等の研修を修了した者又は受講予定者を配置した場合につく加算。(定数とは別の場合)
事故防止や、事故後の検証及び防犯対策の強化のためにビデオカメラやベビーセンサーの設置等を行う場合につく加算。
企業間のマッチングや、地域枠の募集等の事務手続き等を行うために必要となる職員配置数に加え、別途職員を配置した場合につく加算。
保育の提供に携わる人材の確保及び資質の向上を図ることや、質の高い保育を安定的に供給するため、職員の賃金改善やキャリアアップへの取り組みを行った場合につく加算。
また、整備費についても認可施設並みの助成が受けられます。
保育料についても、認可外保育施設と比較した場合、認可保育所並みに設定できることは大きな魅力といえるでしょう。
株式会社などの企業と、企業主導型保育の大きな違いは、助成金が出ることです。景気や時期に左右されることなく、在籍している園児の人数に対して国から確実に助成金が出ることはありがたいことと言えます。
有効求人倍率の上昇から見ても、日本は明らかな労働力不足に陥っています。定年の引き上げや、外国人労働者の雇用といった策もありますが、一番の打開策と言われていることは「女性の活躍」です。
厚生労働省による平成30年版働く女性の実情によると、平成 30 年の女性雇用者数は 3,014 万人と前年に比べ 77 万人増加しています。それに伴い、国は保育所の数を拡大してきましたが、依然都心部を中心に待機児童が存在しています。育休制度が整ったといえど、職場から長期間離れることに不安を持つ女性も一定数存在します。企業主導型保育を実施することで、自社の女性社員の活躍を支えることにもつながります。
企業主導型保育事業は延長・夜間、土日の保育、短時間・週2日のみの利用も可能といったように、認可保育園に比べると、働き方に応じた多様で柔軟な保育サービスを受けることができます。また、複数の企業が共同で設置し、開園することができるため、それぞれの企業のメリットを活かした運営も可能です。
また、地域住民の子どもの受け入れができるため、地域社会への貢献を図ることができます。企業として、地域社会に貢献できる方法の一つです。また、子育てに優しい企業であるとのイメージを持ってもらうことは、企業イメージの向上にもつながります。
※子育て支援員研修は、地方自治体や児童育成協会などが行っている子育て支援の担い手となる人材を養成する研修です。修了すると、子育て支援の分野で働く上で必要な知識や技術等を修得したと認められます。
現在、認可保育園でも深刻な保育士不足となっており、新規開園の場合は、人材確保に必要なノウハウや、実際に働いている事例が無いため、開園に必要な人数を集めることは骨が折れることが予想されます。ただし、土日、祭日を休日に設定している企業や、福利厚生面で充実している企業としては、認可保育園に比べて処遇がいいこともあります。また希望すれば親子で登園できることなど、企業主導型保育園の保育士として働くメリットについて確認し、魅力を活かした人材確保ができるといいですね。
市役所が窓口になる認可保育所と違い、企業主導型保育事業の場合は、自園で園児を獲得する必要があります。地域には知名度の高い認可保育所がある場合、認可外保育施設や託児所としてのイメージを持たれ、説明に手間がかかることもあります。
また0歳〜2歳の受け入れのみの場合は、入所期間が短いため短いスパンでサイクルが回ることになります。そして、認可保育園に兄弟児がいる場合は、年度更新の際に入園しやすくなるため、退園するリスクが上がってしまうこともデメリットのひとつです。
そのリスクを軽減するためには、職場と同じ敷地にある、企業の特色がいかされている、小規模ゆえの丁寧な保育など、企業主導型保育のメリットを最大限に伝えていくことが必要です。
また新規開園の場合は、保育所としての認知度も信頼度もゼロからのスタートになります。自園の強みと、将来的なビジョンを明確にし、情報発信をしていくことを目指しましょう。
企業主導型保育は、自社の従業員の子どもが、入所者数の50パーセントを超えるとが必要です。自社の従業員向けに企業主導型保育所を設置したにもかかわらず、蓋を開けてみたら従業員から申し込みがないという事例もあります。
運営費の額は、在籍園児の人数に対して計算されます。社内のヒアリングとニーズ調査、将来的な予想を立てた上で設置することで、園児が集まらないというリスクを最小限にしましょう。また、令和2年1月16日現在は、地域枠・従業員枠の弾力措置があり、運営に自由度が持てるようになっています。
《出典:地域枠・従業員枠の弾力措置について》
また、連携企業を増やしておくことで、従業員の子どもの入園を確保することも可能です。企業としての福利厚生という観点で、連携する企業を増やしておくことも、園児確保に繋がります。
平成28〜29年度にかけては、運営費の振込みまで6ヶ月かかり、閉園を余儀なくされたという報道もありました。しかし、年々システムや制度の整備が進み、現在は2ヶ月〜3ヶ月で運営費が振り込まれるようになりました。
《出典:企業主導型保育事業(運営費)の諸手続き》
また、概算交付申請も始まりました。例えば、2019年9月1日から10日に申請した9月分は、2019年9月30日に支払いをされています。概算と実績の差額については、実績報告後に差額調整されます。しかし調査が必要な場合や確認事項の回答の遅れ等がある場合には支払い時期が遅れることがあります。とはいえ、園児がいなければ入金されることはありません。給料の未払いにより、保育士が一斉に退職し閉園を余儀なくされた園もあったようです。職員定数や基準を満たさない場合事業を継続できませんので、運営費3〜4ヶ月分の資金はプールしておくことが必要といえます。
今回は、【企業主導型保育事業】 企業側の保育事業を始めるメリット・デメリットについてまとめました。企業として助成金を受けながら、従業員のみならず地域に貢献できることは、中長期的な視点では大きなメリットになります。デメリットについても、発想を転換することでクリアできることも多くありそうですね。専門家の力も借りながら、これまでの企業としての実績を地域社会のために活かしてみるといいかもしれませんね。