冬でもしっかり手洗い!トイレに進んで行きたくなる保育園の壁面飾りアイディア
新型コロナウイルスの流行により、私たちの生活は「新しい生活様式」が基準となりました。これまでの当たり前を見直す中で、本当に大切な習慣に気付く機会にもなっています。今回は、「人間が生きていく上での活動能力(ADL)や生活の質(QOL)を決める」とも言われている「歯」を守るための「歯磨き」について考えてみましょう。
日本人の平均寿命が延びる中「一生自分の歯で食べよう」という標語がよく使われるようになりました。平成元年には当時の厚生省と日本歯科医師会が「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」と提唱する「8020(ハチ・マル・二イ・マル)運動」が生まれました。
出典:平成30年簡易生命表/厚生労働省
平成30年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性81.3歳・女性87.3歳となり、「80歳」を大きく上回っています。80歳で20本の歯をゴールとしてではなく「より健康的で快適な高齢期を過ごすための運動」としての意味へとしつつあります。
乳児・幼児期から歯科保健対策を意識することは、人生をより良く生きていくための秘訣とも言えるでしょう。一生という時間の土台ともなる「乳児・幼児の歯磨き習慣」について詳しくみていきましょう。
歯を大切にするため重要なことは、むし歯や歯周病などのトラブルに対して早期発見・早期治療を行うという姿勢です。そして歯が生えてくる乳児・幼児期は「トラブルが起こる前に防ぐ」ための予防歯科がより重要となります。歯磨きは、歯面からプラークを機械的に除去することでむし歯を予防します。
むし歯を作る要因は、3つにまとめることができます。
(引用:生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット/厚生労働省)
この3つの要因に対応するために、歯磨きは重要な役割と果たしています。
新しい生活様式への意識が高まる中、「歯磨き」や「うがい」の方法についても注意が必要になりました。特に集団生活である保育園においては、新型コロナウィルス感染拡大の要因にならないために以下の3つの点に注意しましょう。
(引用:国立大学法人東京医科歯科大学医学部附属病院新型コロナウイルス感染予防と歯磨き)
保育士の声かけに加え、グループごとに分けて「歯磨き」や「うがい」を行う、飛び散った水滴はこまめに拭き取る、歯ブラシの保管場所や手渡す方法などについて工夫する、などの対応を行いましょう。
保育園に通ってくる乳児・幼児の歯は、ほとんどが乳歯です。個人差はありますが、ほとんどの場合生後6ヶ月頃に下の前歯から生え始め、2〜3歳までに生え揃います。乳歯が生え揃う時期に保育園に通っている乳児・幼児にとって、保育園での歯磨き指導によって、歯磨きの習慣がつくことになります。乳児・幼児にとって、歯磨きの重要性を説くよりも「楽しい歯磨き指導」であることが大切といえます。
保育園における歯磨き指導のねらいは、以下の3つです。
保育園は乳児・幼児が毎日通ってくる施設なので、習慣的に歯磨き指導を行うことができます。多くの保育園では「むし歯の日」や「歯科検診」のタイミングで歯に関する紙芝居を読んだり、大型の歯ブラシを使ったブラッシング指導を行っています。園児への指導に加え保護者へもむし歯に関する知識や、正しい歯磨き方法の情報を提供することで、家庭と連携して歯磨き指導を行うこともできます。
保育園は、乳歯が生えたての乳児から、永久歯に生え変わる年齢の幼児まで通ってきています。それぞれの年齢に合わせた歯磨き指導を行うことで、効果的にむし歯の予防を行うことができ、むし歯に対する理解も深まりやすくなります。年齢に合わせた、歯磨き指導方法をみていきましょう。
この時期のこどもたちへの歯磨き指導としては、まず口の中に食べ物以外の物を入れることへの抵抗感をなくすことが中心となります。おもちゃや身の周りにある物を口に入れることが盛んな時期でもあるため、口の中に入れても大丈夫なおもちゃを用意する、保育士がカーゼで歯を触るなどの方法をとっている保育園もあります。昼食後に、お茶や水を飲んで、口の中を清潔に保つことも効果的です。
保育園によっては、2歳児から歯磨き指導を行なっています。周りのお友達や保育士が歯磨きをする姿を目にすることで、歯磨きへの抵抗感を持ちにくくなります。保育園での歯磨き指導よりも、家庭での歯磨きの習慣が影響しやすい時期でもあるため、子どもの様子を観察しながら一人ひとりに合わせた歯磨き指導をおこなうようにしましょう。
3歳児になると、ほとんどの園で歯磨きが行われています。しかし、家ではまだ保護者に磨いてもらう子も多く、自分で磨くことには慣れていません。正しい歯ブラシの持ち方や、歯磨きを行う時の注意点については繰り返し指導することが大切です。特に歯ブラシを口にくわえたまま、動き回るなどの行動については、注意しましょう。
4歳児になると、これまでの歯磨き指導や習慣によって歯磨きの必要性を理解し、自分で磨くことも身に付いてきます。子どもによっては遊びや次の行動に気持ちが移ってしまい、歯ブラシを濡らして口に入れただけという状態になることも想定し、一人ひとりの名前を呼んで声をかけるようにしましょう。
年長児になると、むし歯についての知識も増え痛みや治療に対する理解を持ち始めます。歯磨きの重要性を伝えることはもちろん、奥歯まで届くブラッシングの方法や、鏡を見て歯を磨くなど細かい指導を行いましょう。小学校への入学や永久歯への生え代わりも見据え、保護者への啓発に適した時期でもあります。
保育園は家庭と違い子どもたち自身が同じ年齢の子どもの姿を目にすることができる場所です。家庭であれば嫌がることでも、子ども自ら「やってみよう」という意欲を持ったり「こうしたらできる」と方法を学ぶ機会が日常的にあるとも言えます。また、保育園は時間の流れがある程度決まっているため、正しい歯磨きの習慣化しやすいという利点もあります。正しい歯磨き習慣を子どもたちの習慣にするために、保育士ができることはたくさんあります。
子どもの歯の生えている状態や、生活の中での好み、他の子どもたちの使っている歯ブラシの情報などをもとに、正しい歯ブラシを選ぶことも保育士ができる歯磨き指導の一つです。正しい歯ブラシの選び方のポイントは3つです。
乳歯用・生え変わり時期用、仕上げ磨き用など、用途によってもいろいろな種類があります。また、素材に関してもナイロン、飽和ポリエステル樹脂(PBT)、シリコンなど、それぞれにメリットがあります。家庭では、好きな色やキャラクターなどのデザインで選ぶことが多いからこそ、保育園での歯ブラシ選びは、安全性と機能性を重視しましょう。正しい歯磨きを子どもたちの習慣にすることを考えた歯ブラシ選びを行うことも、保育士の役目です。
新しい生活様式での注意点を踏まえながら、保育園の歯磨き指導のすすめ方とねらいについてまとめました。いずれ生え変わるからと、甘くみがちな乳児・幼児期の歯磨きだからこそ、保育園として歯磨きに関する正しい情報と方法を伝えることも役割だと言えます。園で使用する歯ブラシについては、おすすめのものを用意することで、保護者への啓発につながります。この機会に、検討されてみることをお勧めします。