元保育士が考えるパワハラ・モラハラ対策|退職を防ぐ保育園の運営  

インタビュー

2019年10月29日

パワハラとは「パワーハラスメント」の略語で、職務上の地位や人間関係などの「職場内での優位性」を背景に行われる精神的・身体的な暴力行為です。

出典:厚生労働省/パワーハラスメント対策導入マニュアル

モラハラとは「モラルハラスメント」の略語で、職場では指導と称し言葉や態度でいじめに近い行為を繰り返すことです。

出典:日本法規情報/モラルハラスメント対策相談サポート

保育園は外部とのつながりが少なく、こういったハラスメントが起こりやすく、人間関係の難しさから退職につながることも少なくありません。今回は元保育士が保育園内で実際に起こっていたハラスメントの実例を通して、運営・経営側にできることを考えます。

上下関係の厳しさ=モラハラ・パワハラになりやすい

保育園での勤務は、外の社会とのつながりが保護者など限られたものしかなく、どうしても閉鎖的になりがちです。
経験の差が1年しかなくても上下関係が厳しく、パートと正職員との差もあります。
こういったことが、保育士同士で態度や言葉の端々に出てしまうことからモラハラ・パワハラになりやすいと考えられます。
また、園長をはじめとした事務局長、主任なども長く勤務することでそういった環境に慣れてしまうため、良くないと分かっていながら変えようとしない風潮もありがちです。

新しく入った職員や保育士は、そういった園の独特な雰囲気がつかめず、人間関係に悩みを抱き、モラハラやパワハラを受けていると一方的に感じてしまうこともあります。
園の風潮だからとモラハラ・パワハラと意識せず指導が厳しくいきすぎてしまうことも多くあります。

元保育士が考えるパワハラ・モラハラ対策|退職を防ぐ保育園の運営

どんなハラスメントがあるのか? 実例二つ

それでは、どういったハラスメントが実際の現場であったのか見ていきましょう。

保育園でのパワハラ・モラハラ実例/保育士3年目・Aさん

先輩保育士の機嫌によってその日の保育や話しかけるタイミングに気を付けなければならない、うまくいかなければもちろん叱られ、うまくいっても嫌味を言われることも……。
報告・相談をしなければうまくできなかったり準備不足のことがあっても手助けをしてくれない時もありました。
また、上手くできても面白くないようで無視されることもあります。
パート保育士には、責任がないと言って子どもたちと関わせることは一切しない園もありました。責任は自分たちにあるのだからパート保育士は保育の下準備や掃除などの雑用だけをさせていました。保育士資格がなくてもできるようなことばかりで、パートさんはとても辛そうで、入社してもすぐ退社してしまうことが多かったです。

このように、人と関わること、コミュニケーションを取りながら仕事をすることが多い保育士ですが、モラハラ・パワハラと受け取れる行為がクラス内で行われるため、園全体では把握できず、された方も誰に訴えて良いかわからず、今後は仕事がしにくくなるため耐えていることが多くあります。

結婚・出産・有給など当り前のことが言い出しにくい/保育士6年目・Bさん

保育士は今も女性が多く、保育園内も女性が中心となって勤務していることがほとんどです。そのため、出産、結婚などももちろん多くあります。
ですが、さずかり婚などの場合は特に突然のことのため、学期途中などだと言いにくく、報告をしてもあまりいい顔をされない同僚もいました。
おなかがどんどん大きくなるのにも関わらず園内で報告をさせてもらえない保育士もいました。報告をすることで前例ができ、他にも広がると困るという園側の思惑です。
また、結婚も同様で、クラス担任を持っている場合は、年度末が来るまで結婚できなかったり新婚旅行のための休暇を取ることもなかなか難しいものがありました。
有給休暇の申請もしにくく、お盆休み、お正月休み、土曜日などに休暇が欲しくても、先輩保育士が優先だったり、新人だと有休をとること自体が生意気だと言われたりし、有給休暇とは名ばかりのことが殆どです。

このようにプライベートな権利がなかなか通用することがなく、辛い思いをしている人はたくさんいます。

元保育士が考えるパワハラ・モラハラ対策|退職を防ぐ保育園の運営

対処法は?退職する前に保育士ができること

こういったモラハラ・パワハラは実は保育園には多くあり、黙認されていたり、通例という雰囲気があれば、長く働く気持ちになれず、退職を考えてしまう人もいることでしょう。
まずは信頼のおける同僚に相談してみる、上司や園長に話してみることが大切です。
小さな子どもたちと関わる保育士の仕事は、豊かな人間性や心からの笑顔がなくてはならない仕事です。
相談をもちかけられた上司や園長は、まずは話を真剣に受け止め、園の中を改善すべく話し合いの場を持つ必要があるでしょう。

おわりに

保育士は子どもたちを育てる大切な仕事です。
心も体も元気に気持ちよく働いていくために、運営側は職場の人間関係にメスを入れる勇気を持ち、モラハラ・パワハラを失くすべく改善をしていくことが望まれます。
長く勤務し経験を積み、良い保育士を育てるためにもぜひハラスメントは失くしていきたいものですね。