保育士が退職したくなる理由と対策を園長や経営者視点で考える

運営・経営

2019年12月9日

保育士不足が深刻化する中、保育料無償化がスタートしています。保育士として就職しても長く続かず退職してしまう、退職後も潜在保育士として再就職をしない人が増えています。果たしてその理由はどういったことなのでしょうか。また、保育士を退職させないための対策とはどんな方法があるのでしょうか。今回は経営者や園長が考える、退職対策について考えます。

保育士が退職する理由とは?

保育士が退職する理由とは一体どのようなことが多いのでしょうか。東京都福祉保健局が発表している平成30年度の「東京都保育士実態調査報告書」の「保育士を辞めた理由」では、1位「職場の人間関係」2位「給料が安い」3位「仕事量が多い」4位「労働時間が長い」との結果が出ています。順に詳しくみていきましょう。

保育士を辞めた理由

東京都保育士実態調査報告書より

【4位:労働時間が長い】サービス残業が浮き彫りに

早番・遅番などのシフト制で働いている保育士がほとんどですが、なかなか時間通りに帰宅できないことが多いのではないでしょうか。早番であっても、ちょっとした記録業務や片付けをして帰りが遅くなったり、遅番であれば少し早めに出勤して準備をしたりと、どうしても時間通りに勤務するのは難しくなります。また、自宅へ仕事を持ち帰らないように、自己判断で勤務時間終了後も保育室に残って準備をしたり、書き物をしたり、時にはクラス会議をしたりと、業務量が多いため仕方がなく残業をせざるを得ない状況もあることでしょう。保育園は土曜日も開園しているので、自分の時間を確保することが難しくなるため、退職につながる理由となっています。

【3位:仕事量が多い】保育以外の仕事、多岐にわたる業務の悩み

保育士は子どもと遊ぶというイメージがあるため、就職してからその他の業務の多さに圧倒される人がほとんどでしょう。

  • ・年間、月間、毎日の保育計画を立てる
  • ・日々の保育の準備
  • ・清掃や片付け、備品の管理
  • ・児童票、クラス便り、お便り帳などの記録業務
  • ・イベントや行事の準備
  • ・保護者会など保護者との関り
  • ・保育士の勉強会、出張など
  • ・園外施設とのやりとり

 
こういった業務が新人の頃からあるのです。
さらには役職が付くと、

  • ・職員の勤務シフトの作成(休日・有給管理)
  • ・園長との打合せ
  • ・諸費など金銭的な管理
  • ・備品の購入検討
  • ・クレーム対応
  • ・新人育成
  • ・実習生の受け入れ など

 
保育に関わることもままならぬほどの雑務が多くなります。やむを得ず、自宅へ持ち帰って仕事をすることがほとんどでしょう。こういった業務量の多さに疲れてしまい、退職を希望する理由になっているのではないでしょうか。

【2位:給料が安い】業務量の多さに見合わない給料への不満

保育士はこれだけの仕事量がありながら、尚且つ子どもにけがをさせないように、心と目を配り、笑顔で楽しく保育をしています。それにもかかわらず、保育士の給料はいまだに低く、見合った給料をもらえないという不満が多くなっています。公立の保育園よりも民間保育園の方が給料が少ない、また、勤務時間や業務などが限られ、割り切って働くことができる派遣保育士やパート保育士の方が給料が良いという場合もあります。
勤務年数や役職が付けば報酬は上がりますが、報酬と業務量を考え退職を考える理由になっています。
 

【1位:職場の人間関係】保育士の人間関係、ストレスで退職を考える

退職の一番の理由となっているのは人間関係の悩みです。どんな職場でも人間関係の悩みはありますが、保育士の世界は独特かもしれません。その理由としては、クラスを複数の担任で受け持つことが多いため、保育士同士の関わり合いが多く、考え方の違いをすり合わせながら仕事を進めなくてはならず、コミュニケーション次第では仕事がしにくい環境になりやすいからです。そして、女性が多い職場のため、そのような悩みをなかなか相談しにくいこともあげられます。さらには、保育園の保育方針や園のやり方が合わなくても、改善してもらうことは難しく、合わないと思った場合は退職せざるを得ない状況になることもあるでしょう。また、職員間の人間関係だけではなく、保育士は保護者との関わりも仕事です。保護者とうまく関われない、折り合いが良くない、クレームが多くなるなども退職の理由となるでしょう。

退職・離職させないために園長やリーダー側でできることとは?

退職の理由が見えてきたところで、園長や主任などが対策できる対応とはどういったことでしょうか。具体的に見ていきましょう。

相談をしやすい雰囲気づくりをする

どんな職場で働いていても、勤務体制や人間関係に悩みはつきものです。悩みを打ち明けたり、相談できる体制や雰囲気があれば、職員の気持ちもすぐに退職へと向かわせないのではないでしょうか。

  • ・新人保育士には、先輩保育士が、週に1~2度時間を作って悩みを聞いたり雑談したりと、コミュニケーションを密にする。
  •  
  • ・中堅保育士には、他のクラスの同じ立場の保育士や主任とちょっとした雑談ができる場を設ける。
  •  
  • ・主任には、園長が配慮し悩みを聞き出す、雑談をする時間を作る。
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  • ・職員会議などでは、主任や園長が職員の良き姿や、努力をしている姿を褒める、励ます時間を作る。

相談をしやすい雰囲気づくり

勤務時間内はなかなか時間を作ることが難しくなりますが、子どもたちのお昼寝の時間を使う、午後から合同保育になるような時間に声をかけるなど、日ごろから雑談を通してさらりと悩みや困っていることを話せるといいでしょう保育士の仕事は、悩みとともに子供の成長ぶりなどを語り合う時間がとても必要です。保育士同士や上司と語り合うことで、保育士の心が満たされ、さらには子どもへの温かな関わりや成長へとつながります。まずは職員を大切に思いやること、普段から気軽な声掛けや小さな励ましを怠らないことで、現場をよく知ることが大切です。現場に任せきりにならないよう、温かく見守りながらも保育士に寄り添っていたいものですね。

アンケートで現場の声を聞く

子どもや保護者との関わり、保育士同士の人間関係についても、コミュニケーションを密にしていれば、少しずつ風通しが良くなり話せる雰囲気ができていくでしょう。ですが、保育方針や、給料・休日のことなどについてはなかなか面と向かっては言えないものです。そこで、1年に1~2度はアンケートを取ってみるのはいかがでしょうか。やりにくいと思っていること、勤務体制で希望をしていること、受持ちたいクラス、給料や有給に関する要望や意見など、記名でも無記名でも良いので、職員の考えを聞いてみるというのはとても大切なことです。日頃の職員会議や雑談などでは、なかなか言えないこともアンケートなら言えることもあるのです。アンケートの結果は必ず会議などで開示し、どういった対策をしていくか、できること、できないことなども職員に伝えていきたいですね。申し出れば聞き入れてくれることもあるとわかれば、職員を大切にしてくれる職場だと伝わり、退職には直結しないことでしょう。

仕事から離れてコミュニケーションをとる時間を作る

保育士の仕事は日々の業務に追われ、頭も体も仕事から切り離して過ごすことが難しい物です。プライベートでも時間がなく、休日も体を休めるだけになり、時には持ち帰った仕事をしていることもあるでしょう。保育園では、食事会や慰労会、飲み会や、ときには職員で旅行にでかけることも大切です。仕事から離れ、コミュニケーションを取ることでさらに距離が縮まり信頼関係ができ、明日からの仕事へ向かう活力となるでしょう。園長や主任は、普段見られない職員の姿を見られ、あまり話すことのない若い保育士とも話す機会ができるかもしれません。若い保育士にとっては園長や主任と話すことはとても大切なことです。こういった時間を設けることが楽しみになり、仕事が辛くても続けていこうという気持ちに繋がります。お給料がそれほど多くない職員に負担をかけないよう、園側は少し負担するなど配慮をしながらイベントを開催したいですね。

まとめ

保育士が退職を決めてしまうのは、コミュニケーションがうまく取れず、悩みをなかなか話せないなどのストレスを蓄積した結果です。どんな職場へいっても何かしら悩みは出てくるものです。風通しがよく、何かあったら話せる・聞いてもらうことができる環境があれば、多少のことは乗り越えていけるのではないでしょうか。退職理由のトップに、「人間関係の悩み」があげられていました。給料や待遇がトップでなかったということは、保育士は少なからず子どもや保育の仕事が好きで就職をしてきたはずです。ならば、その仕事に楽しく長く没頭してもらうため、園側ができることをしていくことが大切でしょう。園長や主任は、「現場に任せいていて知らなかった」、「急に退職したいと言われても」とならないよう、保育の現場に顔を出し、自ら温かなコミュニケーションをとる努力をしていきたいですね。