【企業主導型保育事業】保育士の必要人数は?保育所の開設に必要な広さは?
平成28年度に企業主導型保育事業の制度がスタートし、2020年4月で4年が経過します。平成30年度企業主導型保育事業助成決定一覧によると、全国で3,781<の企業主導型保育施設が開園しています。
出典:公益財団法人児童育成協会/平成30年度企業主導型保育事業助成決定一覧
また会計監査院の調査結果によると、開園後1年以上経過している173施設のうち1年以上にわたって定員充足率が50%未満と、低調な状態が認められた施設が72施設ありました。調査対象の41%を占める結果となっています。定員充足率が10%未満の施設も8施設あり、厳しい状況を現す結果となっています。
出典:会計検査院/企業主導型保育施設の整備における利用定員の設定等について
企業主導型保育事業を運営していくためには、園児確保は必須です。市町村から入所を決定される認可保育園と違い、企業主導型保育は自園で園児確保を行わなければなりません。他の保育事業に比べると、まだまだ新しい仕組みであるため制度や保育内容やサービスについてわかりやすく説明し、効果的に園児を募集することが必要となります。
園児の人数によって助成金の額が決まるため、園児が集まらない限り収益化することができません。そして、園児数が定員に満たない場合でも入園してくるを見越して、定員に対する保育士数を確保する必要があります。そのため、収益化以前に赤字になってしまい、資金繰りがままならなくなる。ということもありますので、園児の確保は非常に重要と言えます。
保育士乳児と1歳児でそれぞれ2名の定員割れが生じた場合の、運営費による収益の違いを見てみましょう。
参考:公益財団法人 児童育成協会/「企業主導型 保育事業助成金」の概要及び支給額等
運営費だけで、年間8,494,560円の収入差となります。これは、定員通り入所した際の年間収入のおよそ25%となります。
また夜間保育や病児保育、預かりサービス事業を行った場合も加算の対象となるため、地域のニーズをしっかりと調査した上で、収益化が図れる園児募集に向けた事業計画を作成することが重要です。
企業主導型保育事業で、園児募集する際は入園のメリットやサービス内容をしっかり伝えましょう。公的な資金の投入により、認可保育園並みの基準で保育が行われていることは大きなメリットです。また、夜間保育や病児保育、預かりサービスなどは、認可保育園では対応していないことも多いため保護者にとっては預けるメリットになります。
企業主導型保育事業は、認可保育園と比べて小規模であるために細やかな保育ができます。特に初めて保育園に通う乳児や保護者にとっては、安心感があります。保育士の人数も限られているため、全職員が一人一人の園児の特徴や、その日に起こった出来事を共有できます。保育園の特徴や特色を伝え、保護者に選んでもらえる広告を作成しましょう。
企業主導型保育事業の成功するためには、保育士定着も重要なポイントです。以下の4つの切り口で、保育士が定着するポイントを考えてみましょう。
まずは保育士が「ここで働きたい」と思う魅力的な求人募集が必要です。厚生労働省の調べでは、2018年11月の保育士の有効求人倍率は3.20倍(東京では6.44倍)となっています。
参考:厚生労働省/「保育士確保集中取り組みキャンペーン」
その激戦の中で、保育士を獲得するためには給与面や休日などの処遇面と、良好な人間関係や自己成長を実感できることを、求人の段階で伝えることが必要となります。
福利厚生を充実させるためには、保育補助者雇上強化加算や処遇改善加算Ⅰ・Ⅱを活用することが先決です。また、ハローワーク経由で取得できる人材開発助成金を活用して、福利厚生や産休・育休を取得できる基盤を整えます。
参考:厚生労働省/人材開発助成金
また企業主導型保育事業は産休・育休から復帰する際に、自分の子どもを入園させることが確約できます。この点は、認可保育園ではできないことですので、しっかりと明記してください。
就職した保育士が「長く働きたい」と思うためには、保育園の雰囲気作りが重要です。園長・管理者の場合は、まず自分自身が相談しやすい上司であることを心がけましょう。日常の保育の中で気になることや、保育士ができるようになったことを中心に、普段から保育内容を題材にコミュニケーションを図ることで、相談しやすい関係を築くことができます。
保育士に「働き続けたい」と思ってもらうためには、居心地を良くする空間作りも効果的です。休憩もなかなか取れない職場の場合、仕事中ずっと緊張状態が続くことになります。子どもたちのいる場所から少し離れて、ほっとする時間と空間を作りましょう。職員室の一部にソファを置く、休憩中に手に取れる雑誌を用意する、落ち着く音楽を流す、などの小さな工夫で空間を作っている園もあります。
保育園を離職した保育士が「この園では保育士としてのキャリアアップが見込めなかった」という理由をあげることがあります。小規模保育園であるがゆえに「日々の保育は落ち着いていて楽しいのだけれど、保育士としての自己成長を考えた時に物足りないと感じる」ことが原因のようです。向上心のある保育士の場合、園内に自己成長の機会があることは仕事を続けていく上で、とても重要なことです。3~5年間の人材育成の目的と、目的達成のための研修や学びの保障などを明確にした中長期的なキャリアプランを作成し、保育士のモチベーションを維持するように努めましょう。
園児の確保も保育士の定着も、企業主導型保育事業を継続していく上では、欠かせない要素です。効果的な園児募集によって園児を確保し収益化を図ることと、保育士定着のための日々の努力を両立し、企業主導型保育事業を成功させていきましょう。