【企業主導型保育事業】保育士の必要人数は?保育所の開設に必要な広さは?

運営・経営

2020年2月19日

企業主導型保育事業はどれくらいのスタッフが必要なのか?

企業主導型保育事業は、認可保育所並みの職員配置基準となっています。保育士資格を持っていないスタッフの場合も、研修の修了が必須となります。保育士を中心としたスタッフの人数について詳細を見ていきましょう。

保育士(保育従事者)のスタッフ人数

  • 乳児・おおむね3人につきスタッフ1人
  • 満1歳以上満3歳に満たない幼児・おおむね6人につきスタッフ1人
  • 満3歳以上満4歳に満たない児童・おおむね20人につきスタッフ1人
  • 満4歳以上の児童・おおむね30人につきスタッフ1人

上記の区分に応じた数の合計に「1」を加えた数以上の保育従事者を配置することが必要です。(時間帯に限らず、最低2人のスタッフの配置が必須)また、スタッフの半数以上は保育士を配置し、保育士資格を持たない保育スタッフは「子育て支援員研修」などの地方自治体などが行う研修を受けなければなりません。

嘱託医・調理員のスタッフ人数

企業主導型保育事業を実施するにあたり、嘱託医は必ず配置しなくてはなりません。
嘱託医は、小児科や内科に関連のある医療機関に依頼することが望ましいです。嘱託歯科医については、望ましい人員としての位置付けとなっていますが、歯科検診の受診は必須事項となっています。また、調理スタッフについては、

  • 利用定員 40 人以下の施設・1 人
  • 利用定員 41 人以上 150 人以下の施設・ 2 人
  • 利用定員 151 人以上の施設は・3 人(うち 1 人は非常勤)

となっています。基準はありますが、給食の外部搬入も認められています。

企業主導型保育事業の職員になるための資格

保育従事者の半数以上は保育士資格を有していることが必要となります。
保育士以外の保育従事者にあっては、「子育て支援員研修」(地域保育コースのうち地域型保育)を修了することが条件となります。
修了していない職員は、当該年度に受講し修了することが必須となります。

参考:厚生労働省「子育て支援員研修」

企業主導型保育事業の開設に必要な設備基準

企業主導型保育事業は、事業主体の工夫によって様々なタイプの保育園が展開されています。独自に建設している保育所もあれば、ビルや民家の一角を利用して事業を開始している保育所もあります。企業主導型保育事業の開設に必要な設備基準について、細かく見ていきましょう。

主な設備基準を理解して保育スペースを設計する

企業主導型保育事業を開設する際は、認可保育所の開設と同様に基準が決まっています。基準を満たして保育スペースを設計する必要があるため助成金が設定されています。

0歳-1歳児

  • 乳児室1.65m² /人
  • ほふく室3.3m² /人

※成長に合わせて、乳児室とほふく室を使い分けるため、受入れの計画割合により必要面積をそれぞれ計算します。
設備基準は、乳児又は満2歳に満たない幼児の利用定員人数によって違いがあります。
乳児又は満2歳に満たない幼児の利用定員20名未満の場合は、乳児室・ほふく室、調理設備、便所(幼児用便座)の設置が必要です。乳児又は満2歳に満たない幼児の利用定員20名以上の場合は、乳児室・ほふく室、調理室、便所(幼児用便座)の他に、医務室も設置が必要です。

2歳児以上

  • 保育室又は遊戯室 1.98m² /人
  • 屋外遊技場 3.3m² /人

このほか、保育室を2階以上に設ける場合については、建築基準法第2条第9号の2に規程する耐火建築物又は第2条第9号の3に規定する準耐火建築物であること等の防火上の必要な措置が必要となります。
また、上記に定めるもののほか「認可外保育施設指導監督基準」を遵守することも求められます。また、屋外遊戯場が施設敷地内に設置できない場合は、付近に代替地となる公園や寺社境内などが必要です。

助成金額(整備費)


 
人口密度区分、定員区分の2つの区分における基準額を基礎として 基本単価を算出し、実際にかかった対象工事費用に3/4を乗じた額と比較し低い方の額を助成されます。

東京都特別区で定員20名の施設を新設する場合の上限額
(地域交流事業・病児保育事業を実施の場合)

基本単価 定員20名(都市部) 8,360万円
地域交流・一時預かりスペース加算 273万円
病児保育スペース加算 2,170万円
設計料加算(基本単価の5%) 418万円
11,221万円

※上記は基準額の上限であり、実際は対象工事の実支出額の3/4との比較によって助成額が決定されます。
引用:企業主導型保育事業ポータルサイト:「企業主導型 保育事業助成金」の概要及び支給額等

整備費の助成金額の加算

施設整備の助成金にも加算があります。それぞれの加算について、詳細を見ていきましょう。参考:企業主導型保育事業ポータルサイト:企業主導型保育事業費補助金実施要綱(案)P51

環境改善加算

既存建物を活用して保育所を開設する場合に、児童の安全性を考慮したり、建物の入口周辺等を児童向けの環境に整備する場合の加算となります。上限金額は1,136万円となっています。

特殊付帯工事加算

保育所の建物に固定して一体的に整備する、下記に掲げる工事を行なった場合につく加算です。
・水の循環・再利用の整備
・生ごみ等処理の整備
・ソーラーの整備
・消融雪設備整備
その他、資源の有効活用及び環境保全のために必要と認められるものも、加算の対象となります。また、新たに土地を貸借して建物を整備する場合に加算がつきます。既存建物の改修工事については、加算金の対象にはなりません。上限金額は1,136万円となります。

地域交流・一時預かりスペース加算

一時預かりや地域に密着した独自事業を実施する場合で、専用スペースを整備した場合に加算がつきます。標準250万円、都市部273万円が上限です。

病児保育スペース加算

病児保育は認可保育園ではあまりスペースが整備されていないため、企業主導型保育事業では需要が高くなっています。病児保育を実施する場合で、専用スペースを整備した場合に加算がつきます。標準1,979万円、都市部2,170万円が上限です。

共同設置・共同利用連携加算

中小企業事業主が、他の企業との共同設置・共同利用について、企業間で検討、相談、準備等を行う場合に加算が付きます。100万円が上限です。
また、施設整備助成金の加算については、他に仮設施設整備工事費や解体撤去工事費、大規模修繕のための加算や、設計加算、土地賃借加算などもあります。企業主導型保育事業で保育所を開設する際は、可能な限り活用できる加算がないかをしっかりと確認し、保育施設に必要な設備を整えましょう。

まとめ

企業主導型保育事業は、待機児童対策の一環として国が定めた制度です。認可保育園並みの基準の補助金が支給されることがお分かりいただけたと思います。保育所に通う子どもたちの安心安全を保証するために必要な「職員の配置」と「施設整備」の両面をしっかりと整えることで、安心して企業主導型保育事業を開始することができます。
令和2年2月18日現在、内閣府は検討委員会からの報告に示された「今後の方向性」を元に、企業主導型保育事業の制度のあり方について見直しを図っています。今後の予定としては、実施体制が十分に備わった実施機関を適切な基準で選定することとなっています。その後、選定された実施機関のもと本事業を実施する新規施設を募集していきます。現段階では、令和元年度の実施施設の新規募集の時期については未定となっていますが、可能な限り速やかな対応が進められています。そのような現状を踏まえ、新規助成の検討に際しては、内閣府から示される新たな実施方針や募集時期、基準等について十分な確認を取ることをお勧めします。特に、施設整備費助成金の申請については、新たな実施方針をご確認いただいた上で契約や工事等を進めていきましょう。