保育士の給料を徹底解説|月収・年収・ボーナスはどうなっている?

運営・経営

2019年11月26日

保育士の給料は低いと言われる日本ですが、本当のところ保育士はどのくらいの給料をもらうことが出来るのでしょうか。保育園・保育士不足で保育士の給料の改善を進めているものの、その恩恵は保育士にきちんと届いているのか、今後給料をアップするためにできることはあるのかなど疑問は多いでしょう。
そこで、この記事では保育士の給料について働く場所による給料の違い給料アップの秘訣をまとめてみました。

保育士の給料は安い?

「介護職・保育士は低賃金だ」というのは、残念ながら世間でも周知の事実でしょう。そこで、なぜ保育士の給料は安いのか、自治体や働く環境によって給料に違いはあるのかといった内容を徹底的に調査しました。

不満が多い保育士の給料事情

保育士の給料事情

保育士の方と話をしていても「毎月結構稼いでいる」「今年はボーナスがたくさんもらえた!」といった話を聞くことは、ほとんどないといっても過言ではありません。それは、新卒で働く保育士もベテラン保育士さんでも同じことが言えます。いくら「保育園が足りない」「保育士の給料は上げるべき」といった声を聞いても、実際のところ保育士の給料が十分に上がったといえる改善はされていないのが現状です。
たとえ給料が上がったとしても、仕事内容を考えるともう少し手厚い給料をもらっても良いのでは?と考える保育士も多いでしょう。大切な子どもの命を扱う「保育」という仕事に対する世間の評価がまだまだ低く、認知されていない印象を持ちます。

自治体によっても差が出る保育士の年収

全国で最低賃金が異なるように、実は保育士の年収も自治体によって多少の差があります。厚生労働省の調査をもとに、保育士の年収ベスト5とワースト5を見てみましょう。

【ベスト5】

1位 京都 401.1万円
2位 東京 394.3万円
3位 愛知 372.8万円
4位 岡山 363.7万円
5位 滋賀 359万円

【ワースト5】

47位 島根 279.7万円
46位 愛媛 284.1万円
45位 沖縄 288.7万円
44位 鹿児島 290.1万円
43位 青森 294.9万円

平成29年度賃金構造基本統計調査より(保育士女性の場合)

最も年収が高い京都府とワースト1の島根県の差は約120万円ほど。ボーナス等の違いもありますが、単純に1ヶ月で考えてみるとおよそ10万円もの差があることになります。
働く場所にこだわりのない方は、できるだけ保育士の年収が高い自治体で働くことで年収をアップすることも可能でしょう。

保育士の年収

企業内保育所の保育士の給料は事業所によって異なる

働く地域によっても給料が異なりますが、働く企業によっても給料に違いがあります。例えば、一般的な保育園で働くのではなく、企業内保育所で働く場合。このケースでは、保育士の平均月収・年収のデータには当てはまらない場合がほとんどです。理由としては、企業内保育所の場合は「その企業の正社員として雇用される」場合が多いこと。そのため、保育所を設置している企業の規模によって保育士の給料も変わってきます。保育園で働くより、企業内保育所で働く方が給料が高いとは一概には言えませんが、選び方によっては企業内保育所で働く方が給料が上がる場合もあるでしょう。給料の他にも、「行事が少なく、保育以外の業務が少ない」「企業の社員と同じく賞与があることも」とメリットを感じて企業内で働く人も多いようです。

公立と私立で給料・年収差はある?

公立と私立で給料・年収差

公立保育園のほうが給料が高い場合が多い

働く保育園が公立か私立かによって、月収・年収の差があります。一般的に公立保育園の方が給料が高い場合が多く、常勤の保育士の方がその差が大きいことがわかりました。

平均月収差

公立 私立 月収差
常勤 ¥279,797 ¥262,158 ¥17,639
非常勤 ¥172,980 ¥169,091 ¥3,889

平均年収差

公立 私立 年収差
常勤 ¥3,357,564 ¥3,145,896 ¥211,668
非常勤 ¥2,075,760 ¥2,029,092 ¥46,668

平成29年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査 より

公立保育士は人気で空きがでないことも多い

ここまでの話を聞くと「公立保育園で働く方が給料が良いのであれば、公立保育士になるのが年収アップへの一番の近道では?」と考える人も多いでしょう。しかし、高い賃金がもらえるというのは、どの保育士も公立を狙っているとも言えます。そのため、人気が高く狭き門であるのは事実です。また、公立保育士は公務員と同じ扱いのため採用試験があります。採用人数が決まっているので、志望者が多ければ受かりづらくなるのも納得がいくでしょう。
「どんなに狭き門でも、チャンスがあるなら挑戦してみたい!」という方は、各自治体の概要を参考にされてみてはいかがでしょうか。

保育士等キャリアアップ研修制度を利用する

「今勤めている保育園での給料アップを目指したい」という方は、「処遇改善手当」で少しでも給料を上げることを検討しましょう。平成29年度から実施する「技能・経験に応じた処遇改善」は、新たに副主任保育士など中堅の役職を創設していただき、その職務・職責に応じた処遇改善を行うことにより、保育園等におけるキャリアアップの仕組みの構築を支援するものです。
内閣府子ども・子育て本部資料 より
保育士等の処遇改善案

この処遇改善手当をもらうために必要なのが「保育士等キャリアアップ研修」の修了です。研修は以下、8分野で構成されており、このうちマネジメント研修+3分野を修了することで、副主任保育士として月額4万円の処遇改善手当を受け取ることが可能です

【研修分野】
①乳児保育 ②幼児教育 
③障害児保育 ④食育・アレルギー 
⑤保健衛生・安全対策 
⑥保護者支援・子育て支援 
⑦保育実践 ⑧マネジメント

ただし、処遇改善手当を受けられる人数は決まっており、月額4万円の処遇改善は(園長・主任保育士を除く保育士等全体の概ね1/3)と定められています。
また、どの自治体で研修を受けても全国で有効なため、出来るだけ多くの研修を修了しておくことで、将来的な年収アップが見込めます。

今後、保育士の給料は改善されるのか?

これまで、保育士の給料の現状や給料アップのためにできることをご紹介してきましたが、将来的に保育士の給料は改善されるのかは疑問が残るところです。実際に、年々国の政策等が進み改善されている一方で、全ての保育士がその恩恵を受けられるというわけではないでしょう。しかし、処遇改善・幼保無償化・働き方改革の点で今後期待できるポイントもいくつかありました。それぞれ詳しく見てみましょう。

処遇改善

2013年より国から支給されている「保育士処遇改善等加算」による手当。その金額は年々増加しており、今後の増加も期待できる手当の一つと言えるでしょう。処遇改善手当によって、月々の給与が数万円アップすれば、安定した収入増となり保育士にとっても大変ありがたい制度だと言えます。しかし、一方で注意しなくてはいけないのが、この補助金をどう使うかを決めるのは保育園側ということ。どの保育士にいつどれくらいの手当を支給するかは、今のところ運営者に委ねられています。そのため、保育園によっては「支給額が少ない」「長年働いているのにもらっていない」「そもそもそんな手当があることを知らなかった」という保育士がいる場合も。今後の動きや給与に関わる情報収集は、自ら行うことが大切です。

処遇改善

また、運営側としては保育士が納得の行く適性な配分や支給時期を意識しなくてはいけません。実際に低賃金で保育士を辞めてしまう人や手当の支給方法に不満が募って退職を考える保育士もいます。全ての保育士が働きやすい環境を作ることも意識しながら保育園の運営をする必要があるでしょう。

幼保無償化

2019年10月より始まった幼保無償化。経済的にも子どもを預けやすくなることから、これまで保育園を利用していなかった保護者が保育園の利用を検討する機会が増えることが期待できます。

園児が増えることで保育士の雇用も進み、保育士不足の日本では「給与を上げて保育士になりたい人を増やそう」と保育士の給与改善により力を入れる可能性があります。
一方で、園児が増えるということは、その分保育士の業務も増えるとも言えます。働く保育士の人数に余裕のある保育園は良いですが、保育士不足の園は注意が必要です。保育士としては低賃金で業務が増えるとなると不満が募りますし、運営側としてはそういった保育士の不満を軽減するような工夫が必要となってくるでしょう。

働き方改革

働き方改革によって働きやすい環境が整っていけば、副業を始める主婦が増えることも考えられます。時短勤務や在宅ワークが推奨され、これまで専業主婦だった女性が子どもを預けて働く時間を増やす可能性もあるでしょう。

働き方改革

そうすれば、保育園を必要とする家庭が増え、保育園の園児が増えることが期待できます。また、保育士の働き方も今後変わってくるかもしれません。これはあくまで予想ですが、保育士がいくつかの園で働いたり、副業を持つこともあるでしょう。
また、子どもを持つ社員のために企業が企業内保育園を設置する可能性も高まってくるはずです。昔から見れば保育園も設置しやすくなり、需要もある現代。保育園経営に力を入れる企業が増えたり、大手企業が自社の保育園で働く保育士に手厚い給与・保障を用意することもありえます。保育士にとっても、このような別の観点から見た将来性もあるのではないでしょうか。

まとめ

保育士は子供の命を預かる責任のある仕事をしているのにも関わらず、給料が低く人手不足であるという現状。国による様々な施策によって少しでも改善することを期待したいところです。ただし、何もせず「いつか給料がアップするといいな」と思っているだけでは、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。キャリアアップや処遇改善について保育園に相談してみる、手当や保障が充実した保育園を探してみるなど自分でできることを少しずつ始めてみるのも良いかもしれませんね。