小規模保育所・託児所の開園条件とメリット・デメリット

運営・経営

2019年10月26日

日本の社会的課題でもある「待機児童問題」。その解決方法の一つとして、小規模保育園や託児所の開園に力を入れる自治体も増えてきました。この記事では、これから小規模保育園・託児所を開園したいと考える方に向けて、保育園の開園条件や開園のメリット・デメリットをまとめています。

小規模保育所の必要性

待機児童の中でも、占める割合が最も大きいのが0歳~2歳児。その割合は、待機児童の約9割とも言われています。特に、生まれて間もない子どもの育児は母親にとっても大変なもの。

共働きの家庭にとっては、
「どちらが育休を取るか」
「いつから保育園に預けるか」
「預けられる保育園があるのか」
など話し合わなくてはいけない問題も山積みです。
一方、社会は慢性的な人材不足が続いています。特に、保育士不足はなかなか解消されず、子どもを預けたくてもすぐに受け入れてくれる保育園がないのが現状です。
そこで近年、小規模保育園や託児所の必要性が増しており、新規に保育園を開設しようと考える保育園経営者や園長が増えてきています。

小規模保育園の開園資格は?

「小規模保育園を開園したい」と考えたとき、最初にチェックしておきたいのが
「開園資格」「開園までの流れ」「提出書類」です。どのような流れで必要な書類を準備すればよいのか、そもそも自分に開園資格はあるのかなど、事前に細かく確認をしておきましょう。

小規模保育園の開園資格

小規模保育園を開園するための資格は不要です。
もちろん、今後保育園を経営・運営していくにあたり、保育士資格を所有しているに越したことはありませんが、必須ではありません。実際に現在開園している保育園も、資格保有者が開園している場合もあれば、開園者は無資格で経営のみに携わっている場合もあります。その場合は、園長・主任に経験豊富な人材を雇い、その方に現場を任せる方法をとることが多いでしょう。保育士の育成には経験や資格も役立ちますが、経営となればまた違ったスキルが必要な場面も多いため、園としては運営と経営の両方の知識を兼ね備えた人材がいる方が良いという考えもあります。

小規模保育園の開園までの流れ

開園するまでの一般的な流れは、以下の通りです。

【小規模認可保育園の場合】

1. 自治体へ事前協議の申請をする
2. 自治体が事業実施要綱、募集要項を公表する
3. 募集要項をもとに必要書類を準備、提出する
4. 自治体による選定を待ち、認可証交付を受ける

まずは、各自治体のホームページを確認し、申請期日までに申請書類を準備します。申請が通過した後は、再度必要書類を提出して自治体からの認可を待つことになります。そのため、数ヶ月で認可保育園を開園することはできず、約4~5ヶ月はかかることが予想されます。

【無認可保育園・託児所の場合】

無認可保育園や託児所は、事業開始の日から1ヶ月以内に設置届を提出するので、認可保育園と比較すると手続きを簡単に終えることが可能です。

小規模保育園の開園させるための提出書類

【小規模認可保育園の場合】

小規模保育園の開園には、国で定めた書類はありません
提出書類は各自治体の募集要項等で確認することが可能です。書類は大きく分けて4種類あります。
· 運営法人に関するもの
 (法人・団体概要、登記証明書など)
· 事業計画に関するもの
 (履歴書、運営計画など)
· 実施場所に関するもの
 (配置図、平面図、耐震診断書など)
· 財務状況・資金計画
 (資金計画書、工事費等の概算見積書など)

【無認可保育園・託児所の場合】

· 設置届
· 施設調書
· 平面図 など

詳しい書類や記入方法は、各自治体のホームページをご覧ください。
開園までの流れと同様、無認可保育園・託児所の方が書類の準備も少なくて済むでしょう。

保育園開園のメリット・デメリット

手続きの流れを踏まえて必要書類をモレなく準備できれば、無資格でも開園可能となる小規模保育園や託児所。次は、実際に開園したことを想定し、どんなメリット・デメリットがあるか考えてみましょう。

保育園開園のメリット

保育園開園のメリットは、以下の通りです。
· 初期投資・リスクが少ない
· 安定した経営が可能
· 社会貢献できる

飲食店や小売業に比べ、初期投資が少ないことも保育園開園の魅力でしょう。特に、小規模保育園であれば、いきなり大人数の園児を募集したり、多くの保育士を雇う必要もありません。ある程度の備品は必要となりますが、最低限の準備で開園は可能となります。
また、美容業界や学習塾などのその他教育業界と比べても、保育は長期間預かるのが一般的です。数回園に訪問して終わりということはほぼなく、数年に渡り長期的に通って頂くことになるため、園の収入安定も期待できるでしょう。
そして、何と言っても保育園の開園は地域の人の役に立てることです。保育園を経営することで働く女性が仕事に復帰できる手助けができ、未来ある子どもたちの育成をサポートすることが可能です。

保育園開園のデメリット

メリットも多くある一方で、開園前に理解しておきたい保育園開園のデメリットもあります。

· 「行政処分」や「利用者からの信用」を常に意識しなくてはいけない
· 園児募集・経営安定までには一定の期間が必要

開園までの流れはスムーズにいっても、長期的に信頼され継続して保育園を利用してもらうためには徹底した園の管理が必要です。最近では、保育士の虐待のニュースが取り上げられることも多いもの。一度、よくない噂や悪評が広がってしまうと、一気に信用を失ってしまう可能性もあります。また、園のお散歩途中の事故などもありましたよね。園内における病気や衛生面、事件・事故にも敏感になる必要があります。
また、小規模保育園で人数が少ないといっても、経営安定・収入増を意識するのであれば、積極的な園児募集を行わなくてはいけません。近くに人気の保育園があるなど、園児を増やすことに苦労する経営者も少なくないでしょう。

補助金・助成金が活用できるか調べよう

安定した経営のためにも、補助金・助成金についても調べておきましょう。

国や自治体の制度を利用することで、保育園の開設・運営にかかる費用や園児ひとりあたりに対して決まった補助金を受けることが可能です。

例えば、認可保育園であれば初期費用でかかる建築費・整備費、備品代について一定の費用免除があります。また、園児の人数や年齢によって補助金が決まっています(自治体によっても異なる)。
基本的には、年齢の低い子どもほど補助金の額が上がり、園児が増えれば増えるほど補助金を多くもらえるようになるため、大事な収入源として把握しておくことが大切です。

そもそも保育園の経営って儲かるの?保育園運営を収益面から考える

保育園の経営で収入を多く得たい場合は、結論から言えば認可保育園をオススメします。
理由は、前述した補助金や国からの免除などサポートが手厚いことが挙げられるでしょう。

一方、無認可保育園であれば、保育料を自由に設定することはできますが、自治体によっては補助金の支給はありません。保育料を高く設定することで収入を増やそうと思っても、高額な保育料では園児が増えないといった悪循環に陥る場合もあります。
ただし、無認可保育園や託児所であっても、独自の教育理念や地域にマッチした教育方針で認可保育園とはちがう特色で人気が出て、収入の安定している施設もあります。

どちらにせよ、園児募集や地域のニーズを把握することで、保護者や園児から選ばれる園を目指すことが必要不可欠となるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?
「小規模保育園の開園」といっても、認可保育園か無認可・託児所を開園するのかによっても、開園までの流れや提出書類も異なってきます。
また、大切になってくるのが国や自治体からの補助金や園の収益性などの経営計画でしょう。比較的始めやすい保育園経営も、長期的に安定した収益を上げるためには様々な工夫が必要です。今回の記事が、これから保育園経営を行う方々の参考になれば嬉しいです。