保育園の働き方改革の必要性|保育士の期待と保育業界の今後の課題

保育園の働き方改革の必要性|保育士の期待と保育業界の今後の課題

運営・経営

2020年9月16日

保育料の無償化や幼保一元化など子どものいる保護者にとっての環境が整う中、保育士を確保できない状態は続ています。2019年に制定された働き方改革関連法は、業務の生産性を上げ、待機児童の解消や、保育士の働きやすさを目指す改革法案です。保育士のための働き方改革とは?改革による現場の変化とは?今後の課題もあわせて考えてみましょう。

保育園運営者がやるべき保育士の働き方改革とは

運営者がすべきことは、保育士の負担を軽減し、仕事の生産性や質を上げることです。2019年4月に制定された働き方改革は、働く人が多様で柔軟な働き方を選択できるようにするための改革です。例えば次のようなことがあげられています。

・残業時間の上限規制
・休息時間を確保する「勤務間インターバル」制度の導入
・年次有給休暇の取得義務
・月60時間を超える残業には割増賃金率の引き上げ
・労働時間の客観的把握
・フレックスタイム制の拡充

出典:働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~/厚生労働省
 
これらを保育の業界に当てはめた場合、どのような業務の効率化ができるのでしょうか。

【保育園運営】業務効率化のためにできること

保育士の仕事は多岐にわたり、子どもと向き合う保育の仕事以外にも大きなウエイトを占める事務仕事もあります。今後、保育士の負担を軽減するためにどのような効率化が考えられるのでしょうか。具体的にみていきましょう。

書類入力業務のICT化とは?ICT化の進まない理由

保育士の仕事で多くを占める事務仕事は、成長記録や保護者へ向けたクラスだよりや園だよりの作成、子ども一人ひとりのお便り帳など手作業で進めることがほとんどです。パソコンなどの通信機器を用いたICT化は、コミュニケーションを取りやすく記録も短時間で行うことができ、保育士の記録業務を軽減してくれるメリットがあります。
しかし、費用を確保できるか、パソコンやインターネット環境は整っているのか、仕事場所を確保できるのかなど様々な問題がありなかなかICT化が進んでいません。
パソコンの使い方をはじめ、ICT業務についての学習などの時間や指導者を確保できない、触ることはできるが慣れていないためかえって時間がかかる、インターネットの接続などに不具合が出た場合の対応をできる職員がいないなど、導入後に発生しうる問題も考えられることも導入を遅らせている一因でしょう。
コストや手間だけにとらわれず、ICT化することで得られるメリットを考え導入を検討していきたいものです。
 
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データベース管理と保護者連携

記録業務のICT化についてだけではなく、子どもの個人情報や成長記録のデータベース化して管理すること、欠席連絡や様々な連絡事項もスムーズで確実になものになります。毎月のお便りに掲載する保護者へのお願いや連絡の他に、短期間で発生する持ち物の依頼や行事の案内、全員に向けてではなく個々に連絡する内容が違う場合など、保育士は全て口頭か手書きの手紙を渡していたはずです。その労力があっても、保護者に伝わらなかったり、忘れられてしまったり、メモを失くしてしまったりとトラブルにつながることもあったはずです。保護者との密で正確な情報交換や連絡は、子どもを預かる上では信頼関係の構築にもつながります。
ICT化をすすめ、情報のデータベース化と、連絡や情報交換の確実性を高めることは、保育士の業務軽減はもちろん、園の信頼アップへもつながるのです。
 
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働くスタイルを選択(正社員・パート・派遣)

働き方改革の中には「働く人が多様で柔軟な働き方を選択できるようにするための改革」という文言があります。
豊かな自分の時間を確保し、緩やかな勤務を望む場合もあるでしょう。正社員としてクラスを担当するだけではなく、保育士の補助的な立場でバックアップするパートや派遣保育士、契約保育士などの働き方を選択することも可能になってきます。
保育士の処遇改善等加算がスタートした影響もあり、復帰し、パートや若い保育士の補助的な立場で働く復帰保育士が増えてきました。ですが、経験や知恵があるにも関わらずなかなかクラスや園の主になって働く役職を担うことは、家庭や子育てのある復帰保育士には難しいことです。
2017年にはさらに処遇改善等加算Ⅱが制定され、副主任や専任リーダーなど新しい役職ができ短時間勤務の保育士であっても経験値を活かし、また手当がもらえるようにもなりました(支給方法や金額は園により異なります)。
 
働くスタイルを選択(正社員・パート・派遣)

有給取得の義務化と時間外労働の制限

これまでは時間外労働に関しては行政指導のみであり、法律の制限はありませんでしたが、働き方改革後は、臨時的な特別の事情がある場合をのぞき「いかなる状況においても、月100時間、年間平均80時間の労働時間を超えてはならない」と規制されます。
そのため、保育士の多くがしているであろうサービス残業はできません。保育士の仕事を効率化し、軽減する必要があるのです。例えば、お便りを書いたり、翌日の保育の準備をしたり、部屋の片づけや保育道具の補充など様々な周辺業務について、時間を設けたり、専用の人員を用意する必要性も出てきます。

有給休暇に関してはこれまで申し出なければ取ることができませんでした。もちろん若手の保育士や経験年数の少ない保育士は、先輩優先・年功序列の雰囲気がある中、有給を申し出るなど、なかなかできなかったことでしょう。リフレッシュはもちろん、通院や家族の行事なども仕事を優先してきた人がほとんどです。
働き方改革後は、年間で10日間の年次有給休暇を付与される労働者を対象とし、年5日の有給休暇の取得が義務付けられるようになりました。有給を取得したい日にちの希望を聞き取り、5日間の有給を取得できるようになりました。これで少しリフレッシュしたり、大切な行事などにも参加できるのではないでしょうか。こういった処遇の改善は保育士の獲得や潜在保育士の解消にもつながることでしょう。
 
参考:時間外労働のわかりやすい解説/厚生労働省

働き方改革を実践した場合のメリット

働き方改革を実践することで、考えられるメリットとしては、

  • 事務仕事の軽減により、子どもと向き合う時間が増え、保育の質が上がる
  • 正社員の他、派遣・パート・契約社員など、さまざまな働き方を選択できる
  • 有給休暇の取得や時間外勤務の短縮でワークライフバランスを維持できる
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    保育士はいきいきと自分の仕事に向き合い、短時間勤務であっても役職や責務を感じながらやりがいをもって仕事に臨めるのではないでしょうか。また、時間や休日に余裕ができることで精神的にも余裕ができ、子どもとの関りに余裕が生まれ、保育内容を充実できることでしょう。さらに、子どもをしっかりと見守り観察ができる、課題が見えやすく改善しやすくなるなど、保育士だけではなく子どもへも大きなメリットを期待できます。

    仕事が好き・辞めたくない!保育士の本音に応える運営とは?

    働き方改革と業務の効率化を図ることで保育士の負担を軽減できれば保育士の長期獲得と質の高い保育の提供ができるでしょう。
    持ち帰りや残業せざるをえない事務仕事がなくなるだけで保育士の意欲は変わってくるはずです。また、休みたいときに休めることは保育士の仕事というイメージのクリーンアップにもなっていきます。
     
    仕事が好き・辞めたくない!保育士の本音に応える運営とは?
     
    保育士は本来子どもと関わり、その成長を見守ることに喜びややりがいを感じます。保育士の仕事を愛し、できることなら長く勤務したいと思っているはずです。保育士から楽しさややりがいを奪っていないか、保育士が働きやすい環境であるか運営者として今一度考えてみましょう。
     

    まとめ

    保育園での働き方改革と、課題について考えてみました。また、働き方改革により様々なメリットが生まれることにも触れました。
    保育士という専門職の仕事に思い切り専念できるよう、これからの保育士と子どものためにぜひ働き方改革について検討し導入してみてはいかがでしょうか。