保育士がコロナウイルスに感染、休業補償・手当はどうなる

保育士がコロナウイルスに感染、休業補償・手当はどうなる?運営側が行うべき対応

運営・経営

2020年4月24日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、新型コロナウイルス)による、緊急事態宣言が発令されて2週間が経過しました。
厚生労働省から「緊急事態宣言後の保育所等の対応について(令和2年4月7日)」の文書も出され保育園運営においては、これまでにないスピードでの対応を求められています。
そんな時こそ、運営側の努力が求められます。ここでは、万が一保育士がコロナウイルスに感染した場合でも安心して仕事を続けてもらうために、休業補償・手当、保育園が行うべき対応などについて確認しましょう。

保育士(従業員)がコロナウイルスに感染した場合

保育園内や自宅での消毒や手洗い、マスク装着などの徹底していても、新型コロナウイルスに感染することはあります。保育園は特定された人だけが出入りする施設とはいえ、集団の場であり、過密が起きやすい場所であることを認識した上で、運営側としてできる対応を検討しておきましょう。

保育士(従業員)が感染した場合の休業手当・休業補償

保育士(従業員)が感染した場合の休業手当・休業補償
 
感染を防ぐためには、コロナウイルスに感染した疑いが出た時点で保育士への休業を要請する必要があります。
新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使(保育士と保育園)で十分に話し合った上で協力をし、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えることが必要です。保育士(従業員)が新型コロナウイルス感染した場合の休業手当・休業補償は、基本的には社会保険による「傷病手当金」によって、補填されます。
その理由としては、新型コロナウイルス感染により、都道府県知事が行う就業制限による労働者の休業となるからです。「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、保育園が休業手当を支払う必要はないといえます。傷病手当金は、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2を補償されます。
具体的な申請手続き等の詳細については、協会けんぽや加入する保険者にご確認ください。
ただし感染疑いの状態では、「帰国者・接触者相談センター」へ相談し、職務の継続が可能という結果が出た場合でも、保育園の自主的判断で休業させる場合には、労働基準法第26条「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまるため、休業手当を支払う必要があります。

園内での衛生管理の確認

厚生労働省による保育所における感染症ガイドラインには「保育所では、乳幼児の生活や行動の特徴、生理的特性を踏まえ、感染症に対する 正しい知識や情報に基づいた感染症対策を行うことが重要である」と記されています。
保育所における感染症対策としては、「抵抗力が弱く、身体の機能が未熟であるという乳幼児の特性等を踏まえ、感染症に対する正しい知識や情報に基づき、適切に対応すること」が求められます。保育士(従業員)がコロナウイルスに感染した場合、一人ひとりの健康観察を入念に行うことが必要です。保育園が集団生活の場であるため、職員・園児ともに濃厚接触者となる可能性が高いです。そのため、感染した保育士(従業員)が主に従事していた場所から消毒作業を行います。保育中であっても、感染が確認された時点で、早急に対応することが次の感染を防ぐことになります。空き教室の利用や、3密を防いだ上での園庭での遊びや合同保育など柔軟な対応を行いましょう。医療機関や行政との連絡・連携を密にとりながら、コロナウイルス感染症に関する正確な情報の把握及び共有に努め、子どもたちの健康被害を最小限に食い止めるように努めましょう。

保護者や行政との連携

保育士(従業員)がコロナウイルスに感染した場合は、行政と相談をした上で、保護者への周知を行います。新型コロナウイルスの感染拡大の防止の観点から、発熱や呼吸器症状など 風邪症状がある場合は登園・出勤の回避を要請していただくよう、厚生労働省から「保育所等における感染拡大防止のための留意点について(令和2年2月 25 日)」の通知も出ています。
ただし、呼吸器症状等が感染性のものでないと医師が判断した場合は、この限りではありません。また、症状等で心配がある場合には、 主治医や嘱託医と相談するとともに、市区町村や保健所とも相談の上対応するように、保護者に伝えるようにしましょう。
現在、「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」を踏まえた対応について(令和2年2月 17 日付事務連絡)」に基づくと、登園を避けるよう保護者へ要請する場合の発熱の目安は37.5℃となっています。ただし、発熱の判断をする際には、平熱に個人差があることについても留意が必要です。このたびの新型コロナウイルスを発症した人の中には、あまり高熱が出ないケースも報告されています。平熱が高い子どもの個々の取り扱いについては保護者と協力した上で主治医や嘱託医とも相談するとともに、さらに判断に迷う場合は市区町村や保健所とも相談の上対応してください。
いずれにせよ、保育の必要性以上に生命の保持を優先することを念頭に置いた上で、保護者との協力関係を作ることが重要です。

常に感染リスクに気をつけて

新型コロナウイルスは、感染力の強さと感染後の重篤化が、特に恐ろしいウイルスです。感染を防ぐためには、感染症成立の三大要因である「感染源」「感染経路」及び「感受性」への対策が重要となります。病原体の付着や増殖を防ぐこと、感染経路を断つこと、予防接種を受けて感受性のある状態(免疫を持っていない状態)をできる限り早く解消すること等が大切です。感染予防のためにできる対策・対応について見ていきましょう。

風邪の症状がある方、感染が疑われる方への対応

発熱などの風邪の症状があるときは、出勤を控えていただくよう呼びかけましょう。本人の体調が回復することはもちろん、感染拡大の防止にもつながる大切な行動でもあります。保育園全体での共通理解を図り、風邪の症状がある方、感染が疑われる方が休みやすい環境を整備しましょう。

感染防止に向けた柔軟な働き方を考える

感染防止には、個人の努力や心がけ以外にも、保育園の取り組みとしてできることもあります。
在宅勤務・テレワーク

在宅勤務・テレワーク

書類や記録など子どもと関わる以外の業務や、壁面などの制作については、在宅勤務やテレワークを検討しましょう。その際、個人情報の取り扱いや作業時間の確認など、これまでになかった対応が必要となります。職員間で共通の基準を確認した上で、マニュアルを作成し、取り組みを進めてください。

研修や会議のオンライン化

日々時間に追われやすい保育現場とはいえ、研修や会議などをオンラインで行うことはまだまだ一般的な方法ではありません。
コロナウイルスの感染予防をきっかけとして、研修や会議などのオンライン化を検討することは、業務改善にも有効であると考えられます。

時差通勤

これまでの「早番」「普通番」「遅番」に加え、30分毎の細かな出勤時間の設定や、通勤ラッシュの時間帯を避けたシフト調整も検討しましょう。通勤中の感染リスクを避けるだけでなく、保護者の出入りの多い時間帯の出退勤を避けることで、園内での感染リスクが下がることにも繋がります。また、職員室やロッカールームの混雑を防ぐこともできます。

短縮営業

保育園の独自での判断は難しいところもありますが、保護者への協力を呼びかけたり、行政と相談の上、検討することは可能です。短縮営業が叶えば、園内での感染リスクはもちろん、通勤ラッシュ時の感染リスクも下がります。
また、園児がいない時間が増えることで、消毒作業や対策会議などを行いやすくなります。

新型コロナウイルス感染症による雇用調整助成金の特例措置

雇用調整助成金とは

雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に休業手当、賃金等の一部を助成する制度です。

雇用調整助成金の特例措置とは

新型コロナウィルス感染症により影響を受ける事業主を支援するため、また、感染拡大防止のため、4月1日~6月30日の緊急対応期間中は、全国で、全ての業種の事業主を対象に、雇用調整助成金の特例措置を実施することになりました。
新型コロナウィルス感染症による雇用調整助成金の特例措置 
 
雇用調整助成金の特例措置

(1)緊急対応期間(令和2年4月1日~同年6月30日)の休業等の上乗せ特例

休業又は教育訓練を実施した場合の助成率の大幅な引き上げ

上記期間内において、休業又は教育訓練を実施した場合の助成率を、中小企業については2/3から4/5へ、大企業については1/2から2/3へ引き上げられました。さらに、事業主が解雇等を行わず雇用を維持した場合は、当該助成率を、中小企業については4/5から9/10へ、大企業については2/3から3/4への引き上げとなります。

教育訓練の加算額の大幅な引き上げ。

上記期間内において教育訓練が必要な被保険者の方に対して教育訓練を実施した場合、加算額(対象被保険者1人1日当たり)を、中小企業については1,200円から2,400円へ、大企業については1,200円から1,800円に引き上げられました。

教育訓練の範囲を大幅な拡大。

上記期間内において、自宅でのインターネット等を用いた教育訓練をできるようするなど教育訓練の範囲の拡大を行うとともに、教育訓練の受講日に教育訓練を受けた労働者は、業務に就くことが可能となります。

生産指標の要件を緩和します。

以前は、生産指標の確認は計画届の提出があった月の前月と対前年同月比で10%の減少が必要でした。しかし、上記期間内においては、これを5%の減少で満たすものとされます。

支給限度日数にかかわらず、活用が可能。

上記期間内に実施した休業は、1年間に100日の支給限度日数とは別枠で利用できることとなります。

雇用保険の被保険者でない労働者も対象。

上記期間内においては、雇用保険の被保険者ではない労働者も休業の対象に含まれます。具体的には、週20時間未満の労働者(パート・アルバイト(学生も含む)等)などが対象となります。

(2)用調整助成金を活用しやすくするための運用面の特例

事後提出が可能な期間を延長。

既に休業を実施し休業手当を支給している場合、令和2年5月31日までは、事後に計画届を提出することが可能となっていました。今回の変更で、この期間が同年6月30日までに延長されます。

短時間休業が大幅に活用しやすくなる。

短時間休業については、従来、事業所等の労働者が一斉に休業する必要がありました。今回の変更で、事業所内の部門、店舗等施設ごとの休業も対象とするなど、活用しやすくなります。

休業規模の要件の緩和。

対象労働者の所定労働日数に対する休業等の延日数の割合(休業規模要件)について、中小企業は1/20以上、大企業は1/15以上としていましたが、これを中小企業は1/40以上、大企業は1/30以上に緩和します。

残業相殺制度を当面停止します。

支給対象となる休業等から時間外労働等の時間を相殺して支給すること(残業相殺)を、当面停止とします。

2.申請方法について

新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置に関する申請書類等については、大幅に簡素化されます。事業主の申請手続きの負担を軽減するとともに、支給事務の迅速化を図ることが目的です。
具体的には、
・記載事項の半減(自動計算機能付き様式の導入や残業相殺の停止等)
・記載事項の簡略化(休業等の実績を日ごとではなく合計日数のみで可とする)
・添付書類の削減 などです。
また、出勤簿や給与台帳でなくても、手書きのシフト表や、給与明細のコピー等でも良いとするなど、事業所にある既存の書類を活用した添付書類の提出が可能となります。以上の変更点を認識することで、保育士の就業を調整することが可能となります。園児の登園状況やコロナウイルスの蔓延状況をしっかりと確認しながら、雇用調整助成金の活用を前向きに検討しましょう。新型コロナウィルス感染症特例措置を利用する場合の申請様式は厚生労働省ホームページよりダウンロードできます。また、助成金の制度内容や具体的な申請手続、申請先について不明点等があった場合、お近くの都道府県労働局または公共職業安定所(ハローワーク)に確認しましょう。

まとめ

新型コロナウイルス感染症による、休業補償・手当、保育園が行うべき対応などについて述べました。
信頼される保育園運営を行っていただくために、保育園に通う子どもたちのみならず、職員の心身の安定と生活基盤の維持も視野に入れ、情報収集、そして制度を活用されることをお勧めします。
また、当記事は助成金の給付を保証するものではありません。あらかじめご了承ください。また最新の情報につきましては、厚生労働省ホームページよりご確認ください。