発達障害の種類|保育士が認識しておくべき知識

発達障害の種類|保育士が認識しておくべき知識

学び・遊び

2020年7月13日

近年増えていると言われている発達障害の子どもや大人。発達障害の特性が現れる早い時期に子どもと関わる保育士が、知っておきたい知識や特性、関わり方について考えていきましょう。

発達障害の種類と特性

発達障害は種類がいくつかに分かれています。小児科や小児神経科などの医師が、親子に問診と子ども自身の発達検査を行い、その結果を照らし合わせて診断名をつけます。
年齢が低い、発達検査を受けられない、本人や周囲に困り感が無い場合などは、診断名が付かないことも多くあります。その場合は、成長を待ち、幼稚園や保育園の入園・小学校への入学を待ち、集団生活に困り感を抱えるようになった時再度診断します。診断名がついたとしても、一人ひとりの性格や個性があるように障害の特性や困り感はそれぞれ違ってきます。また、知的障害など、ほかの障害を併せ持つ場合もあります。
それでは、障害の種類と特性を見ていきましょう。
 
発達障害の種類と特性

自閉症スペクトラム(ASD)/アスペルガー症候群

自閉症スペクトラム障害とはASDや「アスペルガー症候群」とも呼ばれる障害で、人と会話をしたり気持ちをや感情を共感することが難しいとされる障害です。また、同じ動きや言葉を繰り返す行動や、音や光などの刺激に弱くパニックを起こすなどの特性もあります。原因は、はっきりわかりませんが先天的な脳障害でありしつけや育児のせいではありません。
周囲となじまない、一人遊びを好む、こだわりが強い(同じ服やおもちゃで遊びたがる)、臨機応変に対応できず予定の変更に弱くパニックを起こすことなど、集団生活に入ると特性が目立ち始めます。生まれつきの障害ではありますが、低年齢の時はなかなか気づけません。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)

注意欠如・多動性障害(ADHD)とは、名前を呼んでも気づかない、落ち着きがない、注意力散漫、集中が短い、忘れ物が多い、整理整頓ができない、だしぬけに話し、話しが止まらない(多弁)、順番を守れないなど不注意、多動性、衝動性がある障害ですまた、乱暴や反抗が見られる子どももいます。
原因は脳にある神経伝達物質・ノルアドレナリンやドパミンが不足することで多動性や衝動性が生じると考えられています。

限局性学習障害(SLD)

知的な障害や遅れがないにも関わらず、文字の読み書き・計算、文章読解、話しを聞き理解すること、端的に話すことなどを苦手とする障害です。これまでは学習障害(LD)と言われていましたが、限局性学習障害/限局性学習症(Specific Learning Disorders)SLDと変わりました。
未就学時期の検診などで発見することは難しく、小学校へ入学し、1つでも困難があった場合をきっかけに診断がつくことがほとんどでしょう。

発達障害の園児への関わりで気を付けるべきポイント

発達障害の診断がついている場合はもちろん、診断がついていなくても集団生活の中では手助けの必要な子どもはクラスにいるかもしれません。
保育士は保育園生活の中で、そういった子どもたちへどのような関わりをしていく必要があるのでしょうか。また、保育者として保護者にはどのような関わりができるのでしょうか。

子どもへの寄添った関わりを

集団生活の中で一緒に座って絵本が見られない、だしぬけに声を出す、いつも一人でふらふらと遊んでいる、偏食が多い、名前を呼んでも反応がない、友達とのトラブルが多いなど気になる様子がある子どもには、どのような対応が必要なのでしょうか。
まずは、そういった姿は決して保育士や友達を困らせようとしているわけではないということを理解しましょう。
一番困っているのは本人のはず。無理に集団の中へ引き込もうとせず、クラスの職員の人員を増やし危険がないように見守る、促すなど、一対一の関わりを大切にします。
友達の方を見ようとせず一人で遊んでいても、友達に関心がないわけではありません。その子への働きかけと同時に、クラスの子どもたちもその子どもへ関心を持てるような働きかけをし、少しずつ友達との関わりの楽しさを伝えていきましょう。
 
子どもへの寄添った関わりを

保護者との関わりで気を付けるべきこと

保護者の中には、子どもが困り感を抱えていることや発達障害かもしれないことを理解していない人もいるでしょう。また、少し悩んでいても障害があるかもしれないということを受け止めきれず認めない保護者もいます。
そういった保護者の場合は、困っていることはないか家庭での様子をこまめに聞いたり、保育園での様子を伝える等、コミュニケーションを密にし、信頼関係を築くこと、少しでも早いうちに療育や診断を受けたほうが将来の子どものためになることなどを伝えます。
障害の診断がついていたり、保護者が理解しているのであれば、家庭や医療機関、関係機関との関わりを密にし、情報交換していきましょう。時には病院や児童相談所へ出向き、医師や職員とミーティングをし、子ども発達や障害の特性を共有することが大切です。
保護者はわが子に障害があるということは、大変なショックをうけているはずです。また、日ごろの生活では他の保護者とはくらべものにならないほどのストレスを抱えています。ねぎらったり、共感したり、子どもの成長を共に喜び合えるよう、関わりを多く持ちましょう。

関係機関との連携や、保育士の学習

発達障害については研究が進み、薬での治療や、療育の方法、関わり方のコツなどが日々更新されています。関係機関との連携を密にし、その子どもに合った関わりができるように情報交換をしていきましょう。
また、保育士は最新の情報を得るために、学習会や研修、本での自己学習などで勉強を重ねることも大切です。

まとめ

障害のある子どもを受け入れ、集団の中で一緒に保育をしていくことは大変なことでしょう。ですが、社会はどんどん多様化しています。子どもが小さな時期に障害のある子どもと出会うことは、周囲の子どもたちにとっても、障害のある子ども本人も、保育士にとっても必ずプラスになるはずです。クラスの子どもたちが偏見を持たぬよう、あたたかくみんなで受け入れたり、逆にいけないことや間違ったことをしているときは、差別せず発達障害のある子どもへもはっきりと伝えます。障害名がついていなくても、支援の必要な子どもも同じです。

子どもや保護者にしっかりと寄り添い、スモールステップで目標を持ち、小さな成長を共に喜び合い、子どもはもちろん、保育士や保護者など周囲も一緒に成長していきましょう。